研究課題/領域番号 |
24770191
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
塩見 大輔 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 特任研究員 (70507532)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 大腸菌 / 形態形成 / 細胞骨格タンパク質 / ペプチドグリカン / Bacterial two-hybrid |
研究概要 |
細胞形態形成を制御するRodZタンパク質が分裂面にも局在することはこれまでの研究から分かっていた。申請者は、RodZタンパク質がペプチドグリカン(PG)と直接結合することを明らかにした。また、この結合が抗生物質バンコマイシンによって阻害されたことから、PGとの結合部位がRodZとバンコマイシンで重なっていることを示している。すなわち、RodZはPGのペプチド末端に結合する。また、RodZの分裂面への局在は、MreBアクチンに依存していた。申請者らは、RodZがMreBによって分裂面に連れてこられた後、PGと結合すると考えている。 また、RodZ/MreB複合体に含まれる因子を解析するための準備として、これまでにこの複合体に含まれると予想される因子MreC, PBP2, RodAとRodZまたはMreBとの相互作用をBacterial two-hybrid法を用いて調べた。その結果、RodZのみが全ての因子と相互作用した。一方MreBはRodZ, MreCとPBP2はRodZおよびRodAとのみ結合が見られた。これらの結果から、RodZはMreB/MreCサブコンプレックスとPBP2/RodAサブコンプレックスを繋げる役割を果たしていると考えられた。 RodZタンパク質の機能を明らかにする目的でこれまでに単離していたrodZ欠損株の抑圧変異体の解析結果を論文としてまとめ、Molecular Microbiology に掲載された。 これらの結果から、大腸菌の形態形成制御機構におけるRodZおよびその関連タンパク質の機能と役割が徐々に明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌形態形成制御機構において、RodZがMreBアクチンとFtsZチューブリンをどのように制御しているかを明らかにすることを目的として研究をすすめてきた。平成24年度では、RodZがPGと直接結合すること、またPGのペプチド末端に結合することを明らかにした。また、Bacterial two-hybrid法によって、RodZ-PBP2などの結合を検出できるようになった。この系を用いれば、今後未知の複合体構成因子が同定できた時にも、その確認に使うことができると期待できる。 また、平成25年度に実施を予定していたin vitro再構成系の構築実験を少し始めた。大腸菌または好熱菌からRodZ, MreB, FtsZの精製を開始しており、これらが実際にリポソームの中に取り込まれることを観察した。 以上のように、平成24年度の実験はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
RodZを含む複合体内のタンパク質間相互作用をより詳細に明らかにする。具体的には、それぞれのタンパク質の点変異や部分欠失体を作成し、これまでと同様にbacterial two-hybrid法を用いて、その相互作用を調べる。また、in vivo光架橋実験や免疫沈殿なども行い、様々な方法によって相互作用を検討する。また、RodZ, MreB,FtsZ以外の抗体も作製し(これらはすでに作成済み)、実験に用いる。 またin vitro再構成系の条件検討を行い、精製したタンパク質によるリポソームの形態変化を起こせるかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者は、平成25年度より、国立遺伝学研究所から立教大学に異動し、研究室を立ち上げることになった。そのために、研究をこれまで通りに遂行するためにも、様々な試薬、器具、機械類を購入したい。とくに、ほとんど全ての試薬を揃えたり、エレクトロポレーションなど実験の遂行に欠かせない物品の購入を行う。また、研究成果報告のための、論文の投稿や、学会への参加にも研究費を使用する予定である。
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