大腸菌の形態形成を制御する因子RodZの解析を中心に、形態形成機構の解明を前年度に引き続き行ってきた。前年度までに、RodZが、細胞骨格タンパク質MreBアクチンや、ペプチドグリカン合成酵素PBP2およびこれらのタンパク質の関連因子と相互作用することをBacterial two-hybrid法を用いて明らかにしてきた。本年度は、これらのタンパク質間相互作用が、実際に大腸菌内で起こっているかを確認する新たな実験系の構築に取り組んだ。具体的には、in vivo光架橋実験を行った。Bacterial two-hybrid法を用いた実験から、RodZのペリプラズム側のある領域でPBP2などのタンパク質と相互作用することが示唆された。そこで、これらの領域にアンバー変異を導入した変異rodZを発現するプラスミドを構築し、光架橋性の非天然型アミノ酸を取り込ませたRodZを合成し、UV照射により光架橋を行った。その結果、RodZと架橋される複数のタンパク質の存在が示唆された。すでに、候補となるタンパク質に対する抗体を作成しており、今後は、これらのタンパク質の同定を進める。 また、RodZタンパク質の機能を明らかにする目的でrodZ欠損株から抑圧変異を単離し解析を行った結果を論文としてまとめ、MicrobiologyOpen誌に報告した。 以上の結果から、申請者らが2008年に新規形態形成因子として同定したRodZが様々なタンパク質と相互作用する中心的な役割を担っていることが示唆されてきた。
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