多くの真核生物は2つの異なるコンデンシン複合体(コンデンシンIとII)を持ち、それぞれをうまく使い分けている。間期にはコンデンシンIとIIは特徴的な局在パターンを示すが、局在制御メカニズムはほとんど理解されていない。前年度までに、2つの核を持つマウスの受精卵において、コンデンシンIは受精直後には精子クロマチンに局在するものの、細胞周期の進行と共に核外へ排出されていくことをライブイメージングにより明らかにした。我々は、コンデンシンIを核外へ排出する制御因子の有力候補として核外輸送を担うタンパク質のひとつXPO7を予備実験により同定している。本年度は、XPO7による局在制御機構の解析を進めるために、複数の抗原タンパク質を精製してXPO7抗体の作製を試みた。残念ながら、複数回の試みにも関わらず、免疫染色や免疫沈降法に使用できる品質の抗体を得ることはできなかった。そこで、抗体を使用せず研究を進めるために、タグの付いたマウスXPO7を発現するベクターを作製した。これを用いて哺乳類培養細胞にXPO7を発現させたところ、予想通りコンデンシンIの核外排出を促すことが分かった。次に、Ran-GTP存在下においてコンデンシンIとXPO7の複合体形成を免疫沈降法により検証したが、複合体を検出することはできなかった。3者間の結合は非常に弱いのではないかと推測している。最後に、コンデンシンIとIIの局在パターンの普遍性を確認するために、卵巣や脳を含む複数の組織における局在解析を行った。その結果、いずれの組織においてもコンデンシンIが細胞質にコンデンシンIIが核に局在するというパターンが成立していた。すなわち、コンデンシンの局在パターンは細胞種の違いを超えた普遍性を持つと考えられる。
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