研究課題/領域番号 |
24770195
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
清水 英明 独立行政法人理化学研究所, システム研究チーム, 研究員 (10360562)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞間相互作用 / 細胞接着 / 結晶構造 / GEFS+ |
研究概要 |
電位依存性ナトリウムチャネルβサブユニットはチャネル機能調節、細胞接着を担う多機能タンパクであり、特発性てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+)の原因遺伝子として同定されている。申請者はX線結晶構造解析によって、βサブユニットがN末側βストランドの交差によって結合するstrand-exchanged dimerを形成すること、さらにそのstrand-exchanged dimerが互い違いに結合して平面的に配置する zipper-like構造を形成することを明らかにした。本研究ではβサブユニットのユニークな立体構造とチャネル調節、細胞接着機能との関連を明らかにし、さらにGEFS+変異によるチャネル調節、細胞接着への影響を明らかにすることを目的とする。 本年度はβサブユニット野生型、変異体の安定発現株を作成して細胞接着アッセイを実施した。zipper-like構造における分子間相互作用部位に変異を導入したところ、homophilicな細胞接着活性の低下が確認された。また、GEFS+変異体の解析においてもhomophilicな細胞接着活性の低下が認められ、GEFS+発症(チャネロパチー)と細胞接着機能との関連を示す重要な結果が示された。 一方、交差部位を削除したモノマー型変異体は、ある特定の細胞外マトリックス成分に対して強い結合を示すことが確認された。またβストランドの交差部位に変異を導入するとstrand-exchanged dimer形成が促進されることを見出し、その変異体の結晶化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・zipper-like構造に関連した変異体の解析により、結晶構造で特定されたzipper-like構造はβサブユニットの細胞表面におけるtrans-homophilicな結合様式を表していることが確認された。またモノマー状態のβサブユニットが特異的に結合する細胞外マトリクス成分も特定した。αサブユニットに関連した実験も具体的に計画しており、ほぼ当初計画通り進行している ・GEFS+変異体の細胞接着活性の解析では、βサブユニットの細胞接着機能とGEFS+発症(チャネロパチー)の関連を示す重要な成果をあげることができた。当初計画に対する達成度は十分に高いものと考えている。 ・strand-exchanged dimer形成を促進するユニークな変異体を見出し、さらにその結晶化に成功した。今後の解析によってこの変異体の立体構造が明らかになれば、βサブユニットのダイマー形成過程のさらなる理解につながるとともに、αサブユニットとの相互作用解析における有用なツールとなることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
α、βサブユニット(野生型、各種変異体、GEFS+変異体)を培養細胞で共発現させ、プルダウンまたは免疫沈降後、ウエスタンブロット解析を行う。α-β複合体、βサブユニットモノマー及びstrand-exchanged dimerの各割合を比較し、αサブユニットの細胞表面への発現誘導、チャネル活性への影響を検証する。細胞との相性を考慮してαサブユニットは複数のサブタイプ(Nav1.2, 1.5, 1.6など)を試す。また結晶が得られているβサブユニット変異体の結晶構造解析をすすめ、必要に応じて他の変異体の構造解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はGEFS+変異体解析(当初、平成25年度実施予定)を前倒しして実施し、α-β複合体解析(当初、平成24年度実施予定)は平成25年度に実施することになった。そのため、後者の実験に用いるプルダウン、免疫沈降、ウエスタンブロット関連試薬、抗体についての購入分の未使用額が生じた。平成25年度はα-β複合体解析と変異体の結晶構造解析を実施する予定であり、具体的には以下のとおりである。 細胞培養関連試薬、培地(420千円)、各種プラスチック器具(220千円)、ウエスタン関連機器、試薬(240千円)、標識試薬抗体等(200千円)無細胞タンパク合成試薬(300千円)、タンパク精製試薬、カラム類(240千円)、結晶化試薬、解析(200千円)、旅費(450千円)、人件費その他(50千円)。
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