ショウジョウバエの剛毛細胞の先端部に集積するリン酸化酵素IKKεの局在化機構に注目し、ダイニン輸送の制御機構を解析した結果、IKKεがアダプタータンパク質Spn-Fを介して細胞質ダイニンと複合体を形成し、この複合体形成能が剛毛細胞先端部への局在化に必須である事を見いだした。Spn-F-GFP蛋白質の剛毛細胞における動態を観察した結果、Spn-F-GFPが先端部に安定的に係留されている事を見いだした。そこで、IKKε/Spn-F複合体の係留の分子機構を検討した結果、Spn-Fと相互作用するJvlという因子を見いだした。jvl変異体においては、IKKεとSpn-Fは剛毛細胞の伸長初期においては先端部に正常に局在化できたが、伸長後期にはその局在が消失した。また、培養細胞におけるSpn-FとJvlの動態を検討した結果、Spn-FとJvlは顆粒状の局在を示し、ダイナミックに細胞質内を微小管依存的に移動していた。一方、Spn-FとJvlを共発現したところ、Spn-FとJvlが共局在する顆粒はほとんど動かなかった。JvlとIKKε/Spn-F複合体は独立に剛毛細胞の先端部に輸送された事から、JvlとIKKε/Spn-F複合体が剛毛細胞の先端部で相互作用する事によって固定化され、IKKε/Spn-F複合体の係留が起こると考えられた。 我々は、以前の研究においてRab11小胞が剛毛細胞の細胞体と先端部の間を往復運動している事を見いだしている。Rab11もSpn-Fも細胞質ダイニン依存的に先端部に輸送されるが、その動態は大きく異なる。これらの結果は、剛毛細胞の先端部において細胞質ダイニンの積荷の仕分けが行われている事、また積荷の運命が積荷とダイニンを繋ぐアダプタータンパク質の特異的な認識によって決定されている事を示している。なお、本研究の成果は現在学術論文として投稿中である。
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