研究課題/領域番号 |
24770200
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川住 愛子 東北大学, 生命科学研究科, 研究支援者 (80625484)
|
キーワード | 創傷治癒 / 真皮再生 / 瘢痕 / マウス胚 / マイクロサージャリー |
研究概要 |
本研究では、Xenopusの創傷治癒メカニズムを参考にしながらマウス胚とマウス成体の創傷治癒メカニズムを分子・細胞レベルで比較し、マウス成体で真皮の再生を伴う創傷治癒が可能になる条件を明らかにすることを目的としている。平成25年度は昨年度と同様の手法(exo utero マイクロサージャリー)でマウス13.5日胚~17.5日胚の皮膚に人為的に創傷を形成させ、加えて生後1日齢と成体の皮膚に対しても肉眼下での剪刀による創傷形成を行い、マウスの胚から成体までの全ての段階における創傷治癒過程について比較し、以下の通りの結果を得た。 1. Xenopus創傷治癒において真皮再生細胞特異的に発現するPrx1について、マウス13.5~15.5日胚の創傷治癒部位で発現が見られることを確認した。一方、16.5日胚, 17.5日胚, 生後1日齢と成体の創傷治癒部位ではPrx1発現が見られないことを確認した。 2. マウス胚と成体について創傷治癒後の皮膚切片を作製し、「ワンギーソン染色」と「走査電子顕微鏡による形態観察」を行って瘢痕の有無を確認した。瘢痕はコラーゲンがタイトに密集した構造であるが、生後1日齢と成体では「ワンギーソン染色」と「走査電子顕微鏡観察」の両方で瘢痕を確認することができた。一方、マウス胚ではどのステージにおいても上記の方法で瘢痕を確認することはできなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に得られた結果が研究計画立案時には想定していなかったものであったことより平成26年度については交付申請書と異なる計画内容を立案していたが(平成24年度 実施状況報告の今後の研究推進方策を参照)、変更後の計画は以下のものを除いておおむね予定通りに進めることができている。 ・創傷治癒部位を用いたマイクロアレイ 平成25年度はマイクロアレイに用いるための創傷治癒部位サンプルの採取方法を検討し、安定してサンプル採取ができるようになった。この検討に想定より時間がかかり、現在このサンプルを用いてマイクロアレイを行う準備の段階に到達している。 ・瘢痕の有無と相関して発現変化する遺伝子をCre-Lox系で真皮細胞特異的に過剰発現させるTgマウスの作製 真皮細胞特異的エンハンサーの探索(文献の中からの探索)を行った。しかし上記のマイクロアレイの結果が出ていないので、実際にTgマウス作製には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに創傷治癒部位について瘢痕形成のタイミングとPrx1 mRNA発現変化のタイミングを明らかにしたので、今後は創傷治癒部位の網羅的な遺伝子発現解析を行い、そこで同定された因子(Prx1を含む)の真皮細胞特異的loss-off-function解析(ノックアウトマウス解析やドミナントネガティブ型因子の過剰発現解析)とgain-of-function解析(当該の因子またはその修飾酵素などの活性を制御する因子を過剰発現)を行い、Prx1 mRNA発現や細胞の未分化正・増殖能・遊走性を確認する。この解析のため、真皮細胞特異的に発現を誘導するエンハンサーにCre-ERをつないだTgマウスとCreに反応して全身に当該の因子を発現させるレスポンダーTgマウスが必要となるので、これらの作製についても行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたマイクロアレイをまだ行っていないため。 また複数のコラーゲンサブタイプに対する抗体を購入予定であったが、想定より少ない数の検討により免疫染色に成功したので、予定していたよりも支出が少なくなった。 マイクロアレイを外部委託により行う。 また次年度は自然免疫と創傷治癒との関係についても着目して研究を行っていく予定なので、自然免疫反応に関する因子の免疫染色のための抗体購入やqPCRのための試薬購入費に使用する。
|