研究課題
本研究では、環境に適応した発生メカニズムの一端を明らかにすることを目的とし、ショウジョウバエの卵巣形成を制御するfat body由来のシグナルの同定を行った。ショウジョウバエにおいて、ヒトの脂肪組織に相当するfat bodyは、単に脂質貯蔵器官と認識されてきた。しかし、最近の研究により、fat bodyは内分泌器官としての機能を有し、栄養環境に応じて、体内の様々なシステムを制御する中枢であることが示唆された。このような知見から、fat bodyによる器官形成に興味を持ち、fat body由来のシグナルによる卵巣形成の解析を行った。本研究では、fat bodyから分泌されるインシュリンペプチドであるDrosophila Insulin-like peptide 6 (Dilp6) および活性型エクジソン (20-hydroxyecdysone: 20E) が、卵巣において生殖幹細胞ニッチの一部として機能するterminal filamentの形成を制御することを明らかにした。Fat body特異的にこれらのホルモンの合成を阻害した場合の表現型は、卵巣においてこれらの受容体を阻害した場合の表現型と一致することから、fat body由来のDilp6および20Eが卵巣に作用してterminal filament形成を制御すると考えられる。また、本研究では、RNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析により、fat bodyから分泌されるシグナルの同定を行った。その結果、摂食期と非摂食期で発現量が変化する分泌型遺伝子が複数同定され、これらの遺伝子の機能解析を進めることにより、fat bodyによる栄養条件と協調した発生制御機構が明らかになることが期待される。
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http://www.lsi.kurume-u.ac.jp/molecular_genetics/index.html