研究課題/領域番号 |
24770210
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕公 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (40545571)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 受精 / ライブイメージング |
研究概要 |
近年多く議論されている不妊や受精に関する問題を解決するには、まず受精のメカニズムに関する深い理解が必要である。本研究は、可視化(ライブイメージング)技術を用いて受精必須因子の機能を解析し、受精の本質を明らかにすることを目的としており、中でもIZUMO1やCD9を中心とした融合過程のイメージング解析とPAWPを中心とした卵活性化における機能解析について、遺伝子組み換え動物の作出によって進めていく。 今年度の進行状況について、まず融合過程のイメージングについては、予備実験で成功していたライブイメージングの系を順調に確立させ、CD9-GFPマウスを用いたライブイメージングの計画が終了した。その結果、融合におけるCD9-GFPの観察結果から、卵と精子の融合時には、卵が貪食様のエンドサイトーシス活性を発揮していることが分かったので、これまでに解析したIZUMO1の挙動とともに論文として発表した(Satouh et al., J. Cell. Sci. 2012)。これについて、これまでに不可能とされた受精過程のライブイメージングに成功した初めての例になるとともに、電顕観察等で提言されてきた融合のメカニズムを幅広く検証することができたと考えている。また、卵活性化のメカニズム解析については、ノックアウトマウスの作出が順調に進行しており、個体の生存性について標的遺伝子のノックアウトは影響ないことを証明した。これを受け、以後の実験全身で遺伝子を欠損した雄マウスを用いることとし、その精子形成・受精能検定についてin vivo, in vitro両方で検証している。一方で、活性化のメカニズムを可視化するためのもう一つの試みであるCaイメージングについては、これまで不可能とされてきた、卵を生かしたまま非常に長いスパンでCa振動を見る技術が確立しつつある(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度は、卵―精子融合について必須因子のCD9(卵蛋白質)、IZUMO(精子蛋白質)を、卵活性化について重要因子のPLC-Z1およびPAWP(ともに精子蛋白質)を中心に、これら両方の研究を同時に立ち上げ、解析する計画であった。それに対し、卵―精子融合については、CD9-GFP卵を用いて融合のライブイメージング解析に成功し、卵が貪食様のエンドサイトーシス活性を発揮していることについて論文として発表することができた(Satouh et al., J. Cell. Sci. 2012)。また、卵活性化については、単独で卵活性化を起こせるといわれるPLC-Z1やPAWPの生理的な意義を中心に解析しており、すでにPAWPノックアウトマウスの作出が進んでおり、遺伝子ノックアウトによる個体の生存性に関する解析も順調に終了しているだけでなく、その活性についてin vivo, in vitro両方で検証するところまで進んだ。さらに、受精初期に見られる卵のCa振動をより明確に“生きた卵”でとらえるためのイメージング技術が確立しつつあるため、これを応用したPAWPの機能解析が期待できる状況に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
25年度以降は、上記のCa振動観察の技術を応用して解析を進めていく。具体的には、PAWPの機能に重要性が認められた場合、蛍光蛋白質との融合PAWP(蛍光PAWP)のmRNAを卵に注入し、蛍光PAWPの挙動とCa2+の変化を同時にライブイメージングする。PAWPの卵への侵入を可視化するため、抗PAWP抗体を蛍光ラベルして卵に注入する方法も同時に進めていく。蛍光PAWPの生理的活性をPAWPノックアウトマウスに対するトランスジェニックレスキュー方で検証していく。また、その後は24年度から実施した精子―卵融合に関する研究と、卵活性化に関する関係性をはかる研究を進める。具体的には、卵-精子の融合から活性化までを通した受精ライブイメージングを行い、これらの現象のお互いの時間的関係を明らかにし、最終的には受精膜顆粒の放出など、そのほかの受精初期のイベントとともに、受精の初期に起こる現象それぞれについてその関連と重要性について考察していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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