近年、特に諸先進国では実に6組に1組ものカップルが不妊に悩み、わが国でも晩婚化との相乗効果によって少子化問題の存在感が大きくなっている。しかし、不妊や受精に関する問題が盛んに議論される一方で、我々哺乳類の受精のメカニズムに関する知識は驚くほど少なく、深い理解につながる基礎研究が渇望されている。特に、近年大きな論争を呼んでいるのは、“いかにして精子が卵を活性化させるか?その因子とは何なのか?”であり、その候補としていくつかの分子が挙がってからは、それを不妊治療に応用する様々な試みがなされた。一方で、どれが真の因子であるか、ということは未解決のままであり、学会においても意見を2分する状態となっている。 本研究は、ライブイメージング技術を用いて受精必須因子の機能を可視化することで受精の本質を明らかにするのが目的であり、中でもIZUMO1やCD9を中心とした融合過程のイメージング解析と卵活性化物質の機能解析について、遺伝子組み換え動物を駆使して展開していくことが目的であった。その中でも、今年度は、大きな論争を呼ぶもととなった卵活性化因子とその活性メカニズムについて、卵子活性化因子候補ノックアウトマウスの妊孕性に関する解析を行うことで、論争を解決する非常に決定的な証明をすることができた。また、活性化の過程におけるあらたなイメージング実験系を構築することによって、単なる妊孕性の確認にとどまらない、定量的/定性的な証明を行うことができた(論文投稿中)。これらの成果は、単に現在おこっている論争に結論をつけただけにとどまらず、今後活発になる因子のさらなる探求においても他の研究のスタンダードとなる可能性がある。
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