研究課題
発現制御遺伝子は、環境変化や遺伝的な撹乱に対して抑制フィードバックとよばれる仕組みをつかい自身の発現を安定に保ちながら、組織や器官の形成を正しく行う。しなしながら、発現の低下のし過ぎや上昇のし過ぎを繰り返すと、抑制フィードバックのみでは発現が一定のレベルに収束しなくなる。胚発生はロバスト性が高いと言われており、抑制フィードバックだけでなく何らかの発現の振動を抑える仕組みが存在すると推測される。この遺伝子発現の安定化には、遺伝子重複により生じたパラログ遺伝子の働きが鍵であることが指摘さているが、そのメカニズムは未だ明らかになっていない。本研究では、脊椎動物のパラログペアであるPax2とPax5とその祖先型に相当するナメクジウオのPax2/5/8に着目し、その分子実体の解明に迫った。ツメガエルのPax2は前腎に、ナメクジウオのPax2/5/8はそれに相当する組織で発現する。一方、Pax5の発現は前腎ではみられない。Pax2の機能阻害を行ったところ、前腎でPax5の発現が亢進することがわかった。さらに、このPax5の発現上昇は浸透圧ストレスでもみられた。 Pax2とPax5の腎エンハンサーを同定し機能解析を行ったところ、それらは浸透圧ストレスにより活性化することがわかった。ナメクジウオのPax2/5/8の腎エンハンサーを同定し解析を行ったところ、浸透圧ストレスにより活性化することを発見した。これらの結果から、Pax2とPax5のパラログ間でみられる発現の安定化機構は、祖先遺伝子が持っていた浸透圧ストレス応答のメカニズムを進化させ利用していることが示唆された。
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