研究課題/領域番号 |
24770215
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 有紀 熊本大学, 大学院先導機構, 特任助教 (90508186)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 細胞外マトリクス / ファイブロネクチン / イメージング / 体節 / 仮足形成 / 内胚葉 / 背側大動脈 |
研究概要 |
1.体節・内胚葉の各細胞挙動の可視化と定量 背側大動脈が側方から脊索近傍へたどり着くまでに、隣接する体節と内胚葉の細胞がどう動くのかをタイムラプス観察により詳細にするため、ウズラ胚の体節および内胚葉細胞の核をH2B-mCherryで標識し、タイムラプス観察を行った。画像解析技術をもとに、細胞群の移動速度・方向の計測、空間面積の自動抽出などの方法論を確立した。 2.ウズラファイブロネクチン1遺伝子の単離とshRNA法によるノックダウン解析 ファイブロネクチン遺伝子全長(7.5kb)をウズラcDNAライブラリーから単離した。機能的なフィブロネクチンであることを培養細胞を用い、確認した。また、この配列をもとにshRNA法によるノックダウンコンストラクションとドミナントネガティブ型分子を作製した。これを用い、フィブロネクチンの発現を体節近傍で局所的に阻害する実験に成功した。 3.ファイブロネクチン繊維束のアッセンブル・ディスアッセンブル過程の観察 ファイブロネクチンがアッセンブルする際に、外から加えたファイブロネクチンが取り込まれる性質を利用し、ウズラ胚のファイブロネクチン繊維束を以下の方法で可視化した。(1)細胞培養用のファイブロネクチンを蛍光標識。(2)作製した蛍光標識ファイブロネクチンを、ウズラ胚へマイクロインジェクションし、共焦点レーザー顕微鏡を用いてタイムラプス観察した。これにより、ファイブロネクチン繊維束が、背側大動脈トランスポジションの時期に体節―背側大動脈―内胚葉―脊索間にアッセンブルされ、やがて消失する現象がどのようにして起こるのかをタイムラプス観察に成功した。また、同時進行で、GFP融合型ファイブロネクチンも作製した。これも予想通りに機能することが、検証済みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
7.5kbほどの長さのウズラファイブロネクチン1遺伝子を、スムーズに単離することができた為、その後の機能解析の為の遺伝子改変(shRNAやドミナントネガティブ型、GFP融合型等の作製)が順調に進み、それらが予想どおりに機能することも確かめることができた。実験材料作りをゼロから始めたにも関わらず、すでに実験・解析の段階に進んでおり、順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
1. ファイブロネクチン繊維束の欠損が、体節・背側大動脈・内胚葉細胞の挙動へ及ぼす影響 ファイブロネクチン繊維束が、細胞群の動きに対してにどのような役割を果たしているのかを明らかにするため、ファイブロネクチンの繊維化を阻害する70kDaファイブロネクチンを局所的に発現させ、各細胞の挙動の変化をタイムラプス観察解析する。 2.背側大動脈へのVEGF伝播とファイブロネクチン繊維束の分布パターンとの関わり 脊索や内胚葉の中軸部で発現するVEGFは、背側大動脈のトランスポジションに必要であることがすでに知られている。VEGFアイソフォームのVEGF164は、細胞外基質への親和性が高い為、中軸組織から分泌されるVEGFがファイブロネクチンに依存して拡散し、受容体VEGFR2を発現する背側大動脈に作用すると考えられる。ファイブロネクチン繊維束がVEGFシグナルの伝播に直接的に関わるかどうかを明らかにするため、(1)背側大動脈が移動を開始する時期に発現するVEGFアイソフォームを同定する。(2)VEGF164の発現 を抑制するshRNAコンストラクトを脊索へエレクトロポレーションし、背側大動脈・体節・内胚葉細胞の挙動に及ぼす影響をタイムラプス観察解析する。(3)胞外基質群に依存せず自由拡散するVEGF120は、背側大動脈の細胞挙動にどのような変化を及ぼすのかを検証する。VEGF120発現ベクターと、VEGF164発現を特異的に阻害するshRNAベクターとを脊索へ共導入した胚をタイムラプス観察し、細胞挙動への影響を正常胚と定量的に比較する。(4)以上の結果を、ファイブロネクチン繊維形成を阻害した場合の細胞の挙動と比較し、VEGFシグナル伝播におけるファイブロネクチン繊維の役割を考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
初年度と同様に、上記実験計画の遂行に必要な試薬類およびガラス・プラスチック器具の購入を行う。
|