研究概要 |
申請者は脊椎動物における顎の獲得の発生学的メカニズムの正確な進化のシナリオを描くため、顎口類の中で最も古い起源をもつ軟骨魚類のデータを得ることが必須であると考えた。まず、これまでマウスやニワトリで報告されている顎のパターニング機構に関わる遺伝子について、自らが構築したトラザメEST配列データベース(http://transcriptome.cdb.riken.go.jp/vtcap/index.htm)を利用して相同遺伝子を単離し、トラザメ胚の顎形成ステージにおける時間空間的発現パターンを調べた。顎の背腹軸に沿ったパターニングに重要な役割を担うDlx遺伝子群(Dlx1-6)を単離し、胚発生時期おける時空間的発現パターンをin situ hybridization法により検討した。その結果、これらの遺伝子は咽頭弓において背腹軸に沿って入れ子式の発現パターンを示し、他の顎口類と同様の発現パターンであることを明らかにした。このような発現パターンをDlxコードと呼ぶが、今回の結果はこのDlxコードが顎口類全体に保存されていることを示唆する結果となった(Takechi et al., 2013)。さらに、顎関節の形成に重要な役割を果たす遺伝子であるBapx1の時空間的な遺伝子発現パターンをトラザメ胚で解析したところ、咽頭胚後期(ステージ25, 27)では咽頭内胚葉や頭部中胚葉に、また顎関節形成期(ステージ28-29)では顎関節に発現することを明らかにし、顎関節におけるBapx1の発現パターンも顎口類で保存されていることがわかった。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、サメ水槽と水質管理用品(人工海水用塩, ヨウ化カリウム, pH・硝酸・亜硝酸測定用試薬等)や研究用試薬(分子生物学実験用の各種酵素・培地等, シグナル阻害剤, in situ用試薬, 免疫組織化学染色用抗体等)、あるいは研究用消耗品(手術用ピンセット, ビーズ, タングステン針, 参考書等)に使用予定である。
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