先行研究として進めてきたネッタイツメガエルの染色体地図情報について、FISHマッピング用として新たにニワトリのマイクロ染色体(9番から28番染色体)連鎖遺伝子を追加選択し、それらの遺伝子のネッタイツメガエルにおける染色体上の位置を決定したのち、得られた染色体地図と他の脊椎動物のゲノム・染色体地図との比較解析を行った。その結果、ネッタイツメガエルにおいて18対のニワトリマイクロ染色体(16、25番を除く9番から28番染色体)に相同な連鎖群を特定した。さらにそれぞれのニワトリマイクロ染色体連鎖群は、マイクロ染色体をもたないネッタイツメガエルでも高度に保存されていることから、多数のマイクロ染色体を有する爬虫類、鳥類のゲノム・染色体構造は、四肢動物の共通祖先ですでに獲得されていたことが示唆された。この研究成果はPLoS ONEに投稿し、平成24年に受理された。 また、ネッタイツメガエルの染色体マッピングに用いたcDNAクローンのうち、ネッタイツメガエルの染色体領域全体をカバーできる59個のクローンを選択し、異質四倍体であるアフリカツメガエルの染色体にマッピングすることによって、アフリカツメガエルの比較染色体地図を作製した。その結果、異質ゲノムに由来する2対の同祖染色体のグループを同定することができ、ネッタイツメガエルの遺伝連鎖群はアフリカツメガエルでも高度に保存されていることを明らかにした。これらのことから、アフリカツメガエルにおける異質倍数化では、異なる染色体間の相互転座はほとんど起こらなかったことが明らかとなった。この研究成果はHeredityに投稿し、平成25年に受理された。なお本研究で得られたデータは、現在日本とアメリカの共同で進行中のアフリカツメガエルのゲノムプロジェクトにおいて、遺伝子連鎖群と染色体を正確に対応づけるための重要な基礎データとなっている。
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