研究課題/領域番号 |
24770227
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
北沢 千里 山口大学, 教育学部, 准教授 (30403637)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 棘皮動物 / 成体原基形成 / 形態進化 / 割球分離 / マイクロマニピュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、動物の形態形成機構がどのように進化してきたかについて、特に棘皮動物の幼生から成体への体制変化を追跡することにより、解明していくことを目的としている。実験発生生物学的・分子生物学的アプローチにより、ウニ類をはじめとする棘皮動物の発生過程における体軸形成および成体原基形成機構に注目して研究を進めている。 今年度は、ウニ類の成体原基形成機構について、まず、細胞塊を形成する細胞運命を形態学的・実験発生生物学的に解析を進めた。卵割期から原腸胚期までの外胚葉領域の様々な除去実験および染色した予定外胚葉領域の移植実験により、an2領域が植物極側からの何らかのシグナルを受けて、細胞塊が形成されると考えられた。また、細胞塊が形成された後、マイクロマニピュレーションにより吸引除去したところ、新たに細胞塊が再生されることが明らかとなった。このとき、Nodal阻害剤により左右極性を攪乱された場合でも、攪乱された極性を保ちながら、細胞塊が再生されることが明らかとなった。 次に、クモヒトデ類およびヒトデ類における成体原基形成とその左右非対称性について追跡した。昨年度、発生過程を明らかにしたナガトゲクモヒトデに対して、卵割期においてNodal 阻害を行ったところ、ウニ類で見られた左右極性への影響は認められなかった。また、ヒトデ類に対する影響も同様であった。 今年度は、山口県沿岸でサンショウウニ科に属する新たな種、コデマリウニが生息していることを発見した。本種の発生の報告はほとんどなく、今回、変態まで至る発生過程を明らかにすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も、この数年間同様、目的とするサンショウウニ科のウニ類の確保が困難であった。しかしながら、今年度は同科に属する新たな種となるコデマリウニを確保でき、これまで報告がほとんどされていない本種の発生過程を明らかにすることができた。また、ウニ類だけでなく、クモヒトデ類、更にはヒトデ類の発生過程も追跡することにより、棘皮動物の成体原基形成系機構の進化過程を考察するための結果を得ることができた。これらの結果の一部は、学術誌に掲載され、また国際学会での発表を予定している(すでに登録済み)。
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今後の研究の推進方策 |
成体原基形成機構については、ウニ類において、羊膜陥あるいは細胞塊を形成する領域と他領域との相互作用について、更に形態学的・実験発生生物学的・分子生物学的手法を用いて、解析を進める。特に、羊膜陥あるいは細胞塊、その周辺器官の除去だけでなく、これらを他領域へ移植した場合の影響を追跡する。薬剤処理と顕微手術を組み合わせて、これらの器官の左右極性との関係についても調べる。更に、クモヒトデ類およびヒトデ類などの他の棘皮動物についても、各種の成体原基形成を形態学的に詳細にとらえ、上記の実験発生生物学的手法を駆使して、成体原基形成に関与する領域の特定を行う。各種の胚や幼生から、体軸形成に関連する因子のクローニング後、時間的および空間的な発現パターンを解析し、その機能について解析を行う。得られた結果から、棘皮動物がどのように成体原基形成機構を進化させてきたかについての考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の見積金額と実質の支払金額間に差額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の残高(799円)を加えて、更に研究を推進して行く予定である。
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