研究課題
ミトコンドリアや葉緑体を生み出した細胞内共生は現在でも多くの生物同士で見られ、新たな機能と構造の獲得による真核細胞の進化の原動力となっている。しかしその成立機構は明らかにされていない。研究代表者らは繊毛虫のミドリゾウリムシとその共生クロレラ用いて、真核細胞同士の細胞内共生が成立するプロセスを明らかにした。このプロセスは次の4つからなる。1) クロレラが宿主食胞内でリソソーム消化酵素耐性を示す。2) クロレラが宿主食胞膜から細胞質へ脱出する。3) クロレラを包む食胞膜が、リソソームが融合しないPV膜と呼ばれる共生胞へ分化する。4) PV膜に包まれたクロレラが宿主細胞表層直下へ定着する。本研究は、細胞内共生成立に必須な上記の4つのプロセスに関与する重要分子の解明を目的としている。今年度は以下の成果を得た。1. クロレラの再共生過程におけるクロレラの細胞分裂の開始時期を明らかにした。さらに、クロレラの細胞分裂に与える宿主の餌の有無の影響を調べた結果、共生が成立して72時間以内には、PV膜を介した宿主とクロレラの物質交換が可能になることが明らかになった。2. クロレラは宿主細胞表層直下のどの部分にも均等に接着しているのではなく、宿主の背側・腹側、後端、前端の順に接着しやすく、この逆の順に外れやすいことが明らかになった。3. クロレラが共生している状態のミドリゾウリムシとクロレラを除去したミドリゾウリムシからRNAを抽出し、それぞれのcDNAライブラリを作成し、Illumina HiSeq2000によるシークエンスをおこなった。Biological replicatesのシークエンスのデータも含めて3回のシークエンスのデータ解析を行い、DDBJへの登録作業を行った。現在執筆中の論文は近日中に国際誌に投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
実験は、交付申請書に記載した計画どおりに進展している。また、学会発表や論文による成果の発表もおおむね順調である。
平成25年度は、昨年の成果を国際誌に投稿する。また、交付申請書に記載したとおり、前年度中のトランスクリプトーム解析で重要な機能が予測された遺伝子の機能をRNAiで明らかにする。ミドリゾウリムシではまだRNAiは行われていないが、ヒメゾウリムシ(Paramecium tetraurelia)とゾウリムシ(P. caudatum)では、山口大学で最適条件が開発済みであるため、同様な条件で実施できることが期待できる。
該当なし
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Protist
巻: Jul; 163(4) ページ: 658-670
10.1016/j.protis.2011.10.004.
Environmental Microbiology
巻: Oct;14(10) ページ: 2800-2811
10.1111/j.1462-2920.2012.02793.x.
European Journal of Protistology
巻: May;48(2) ページ: 124-137
10.1016/j.ejop.2011.10.002.