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2013 年度 実施状況報告書

進化過程における新規な組織器官の形成メカニズム:魚類育児嚢の進化

研究課題

研究課題/領域番号 24770231
研究機関上智大学

研究代表者

川口 眞理  上智大学, 理工学部, 助教 (00612095)

キーワード育児嚢 / 子育て / タツノオトシゴ
研究概要

タツノオトシゴは、オスがメスから卵を受け取り育児嚢内で子育てを行っている。昨年度までに、タツノオトシゴHippocampus abdominalisの育児嚢で、卵を受け取る前の未発達期のオスに比べ、卵保育期のオスの育児嚢で発現量が高まる遺伝子が100個見つかっている。今年度は、それらの遺伝子のうち、3種類のC型レクチン(CTL1、CTL2、CTL3)とパトリスタシン遺伝子に注目した。
C型レクチンに関しては、組換えタンパク質を大腸菌の系で作成し、精製した組換えタンパク質を抗原としてマウスおよびウサギ抗体を作製し、ウェスタンブロットや免疫組織染色法で局在を調べた。その結果、CTL1とCTL2に関しては局在を明らかにすることができ、いずれも育児嚢内の上皮に局在していることが分かった。レクチンは、一般に抗菌作用を持つことが知られており、今回局在を明らかにしたCTL1とCTL2はいずれもシグナルシーケンスをN末端側に持つ、分泌型のタンパク質である。そこで、保育期に育児嚢内に分泌し、育児嚢内で雑菌が増殖しないような機能を持つと予想し、卵を保育前のオスの育児嚢内液を用いたウェスタンブロットを行ったが、CTL1とCTL2は検出されなかった。今後は、卵を保育中のオスの育児嚢を用いて同様にウェスタンブロットを行い、保育期にCTL1とCTL2が分泌されているのかを調べたい。
パトリスタシン遺伝子に関しては、まず育児嚢を持たない他の魚種プラティーのゲノムデータベースを用いてパトリスタシン相同遺伝子を探査したところ、7つ見つかった。そこで、RT-PCR法で発現領域を調べたところ、主に鰓で発現していることが分かった。今後さらに詳細に調べる必要があるが、以上の結果はパトリスタシン遺伝子は本来鰓で発現していたが、魚類の進化過程でその発現領域を育児嚢特異的な発現を示すようになったことが示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タツノオトシゴの育児嚢で発現する子育てに関わると予想される2種類の遺伝子(C型レクチンとパトリスタシン)遺伝子については局在を明らかにすることができ、さらに、新たに4つの遺伝子に関してcDNA全長配列を決定できた。これらの機能解析を進めていくうえでの基礎を固めることができ、研究はおおむね順調に進んでいるといえる。また、本年度は、関連した論文も投稿しており、論文執筆も順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

1.CTLの機能解析:上述したCTLの組換えタンパク質は、マルトース結合タンパク質との融合タンパク質(MBP-CTL)として作製したが、活性のある組換えタンパク質の作製には至らなかった。そこで、ベクターにpET3cを用いてCTLを封入体として作製した後、リフォールディングの条件検討を行い、活性のあるCTL組換えタンパク質の作製を目指す。大腸菌培養液にCTLを加え、増殖阻害が生じるかを調べ、CTLが育児嚢内でどのような機能を持つのかを調べる。また、上述したCTLの抗体の作製はCTL1とCTL2のみ成功している。CTL3の抗体も合わせて作製し、それぞれの局在を明らかにする。
2.パトリスタシンとパラログの局在:上述したようにタツノオトシゴのパトリスタシンは育児嚢で特異的に発現していた。パトリスタシンと同じアスタシンファミリーに属するパラロガス遺伝子もクローン化でき、それらはネフロシンとC6AST2である。そこで、3つの遺伝子から組換えタンパク質を作製した後、抗体を作製し、それぞれの局在を明らかにし、他の魚種(プラティーなど)と発現領域の比較を行い、パトリスタシン遺伝子の進化について考察する。
3.コレクチンプラセンタの機能解析:初年度にクローン化したコレクチンプラセンタ遺伝子については、抗体を作製し、局在を明らかにするとともに、培養細胞に遺伝子導入を行い、機能解析を進める予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度は培養細胞を作製するためのCO2インキュベーターの購入を検討している。まとまった金額が必要となるため、最大限の節約を試みCO2インキュベーター購入資金として次年度に繰り越した。
上述したように、CO2インキュベーターの購入資金として使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Molecular co-evolution of a protease and its substrate elucidated by analysis of the activity of predicted ancestral hatching enzyme.2013

    • 著者名/発表者名
      Mari Kawaguchi, Koji Inoue, Ichiro Iuchi, Mutsumi Nishida, and Shigeki Yasumasu
    • 雑誌名

      BMC Evolutionary Biology

      巻: 13 ページ: 231

    • DOI

      10.1186/1471-2148-13-231

    • 査読あり
  • [学会発表] patristacin遺伝子の進化2014

    • 著者名/発表者名
      中野悠子・今福愛子・川口眞理
    • 学会等名
      第66回日本動物学会関東支部大会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      20140315-20140315
  • [学会発表] メダカ属の孵化酵素HCEの至適塩濃度2014

    • 著者名/発表者名
      川口眞理・井上広滋・安増茂樹
    • 学会等名
      第66回日本動物学会関東支部大会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      20140315-20140315
  • [学会発表] メダカ孵化酵素HCEの2つのアイソザイムの至適塩濃度2013

    • 著者名/発表者名
      川口眞理・井上広滋・安増茂樹
    • 学会等名
      第84回日本動物学会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      20130926-20130928
  • [学会発表] ニシンの卵膜の2層構造~卵巣由来と肝臓由来の卵膜~2013

    • 著者名/発表者名
      佐野香織・川口眞理・富田憲司・安増茂樹
    • 学会等名
      第84回日本動物学会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      20130926-20130928
  • [学会発表] アカハライモリ胃部域アスパラギン酸プロテアーゼのクローニング2013

    • 著者名/発表者名
      長澤竜樹・佐野香織・川口眞理・小林健一郎・安増茂樹・井口智文
    • 学会等名
      第84回日本動物学会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      20130926-20130928
  • [学会発表] 卵胎生魚の孵化酵素遺伝子2013

    • 著者名/発表者名
      川口眞理・安増茂樹
    • 学会等名
      第15回日本進化学会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130821-20130824
  • [学会発表] 魚類の2つの進化系統において異なった運命をたどった孵化酵素の重複遺伝子2013

    • 著者名/発表者名
      佐野香織・川口眞理・渡部諭史・安増茂樹
    • 学会等名
      第15回日本進化学会
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      20130821-20130824

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公開日: 2015-05-28  

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