研究課題/領域番号 |
24770234
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
郡山 尚紀 酪農学園大学, 獣医学部, 講師 (50416278)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | チンパンジー / 人獣共通感染症 / 血清診断 / 病原体遺伝子検査 |
研究概要 |
当該年度は、まずタンザニア国内にて研究活動を行う許可をタンザニア野生動物局並びにタンザニア科学技術局に申請し受理された。マハレ山塊国立公園にて調査を開始することができた。計画通り、京都大学のカンシアナキャンプを拠点として、Mグループと呼ばれる群れの追跡調査を行った。現地での3週間、天気にも恵まれ、毎日チンパンジーの観察に出かけることができ、幸運にもほぼ毎日発見することができた。その中で、チンパンジーに不必要なストレスをかけることなく非侵襲的にサンプリングを行い、個体識別されたチンパンジーから糞、尿、体液成分のサンプルを採材することができた。まず、糞について日本での検査のために急速乾燥させ保存した。次に、糞の一部および尿はHTLV-1に対する抗体の検出をキャンプで行った。さらに糞並びに体液の一部からは病原体を検出するためにDNAあるいはDNAとRNAの両方の抽出を行った。現地調査の結果、HTLV-1の検出には至らなかった。今後は、日本に持ち帰ったチンパンジーの糞から抗体を取り出して、彼らが保有する基礎感染病原体の種類を特定し、さらにヒト由来病原体に対する抗体を保有しているか調べる。また、野生チンパンジーの糞中に含まれる病原体の遺伝子を抽出し、それぞれの病原体に特異的な配列をターゲットとしたプライマーを用いてその有無を調べる。 これらの成果は、当初計画していた初年度におけるチンパンジーの追跡及びサンプリング、さらに病原体の回収も目指しながら、同時に糞中に排出される抗体を用いて、ウイルス感染履歴を調べるという計画をほぼ達成している。 また、今回の調査で、国立公園を訪れる観光客とも話をする機会があり、チンパンジーの研究についてだけでなく観光と保護についても語ることができ、調査への理解を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンザニアマハレ山塊国立公園での調査許可の取得および調査活動を無事に行うことができ、また、個体識別したチンパンジーから糞のサンプルを採取できた。これらのサンプルは当初の予定通り、急速乾燥させ保存して持ち帰ることができた。この他、現地ではHTLV-1の抗体検査を実施し、さらに病原体の遺伝子検査のためのDNAとRNAの抽出、並びにRNAの逆転写反応を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度に持ち帰ったサンプルを処理して抗体を抽出し、病原体抗原と反応させる工程に進むことで抗体反応の結果を分析する。進行度に応じて順次反応させる病原体抗原の種類を増やしていく。また、病原体そのものの検出を遺伝子解析で行っていく。次年度は、タンザニアマハレ山塊国立公園に再度渡航し、貴重なチャンスを生かしながらサンプリングを行い、チンパンジーの集団発症の発見のチャンスをうかがうとともに、前年度の結果と比較できるサンプルを採取する方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に得られたサンプルについて分析を行うための、消耗品購入費、論文掲載のための執筆費に使用する。 さらに、前年度と同じようにタンザニアマハレ山塊国立公園へ渡航し、チンパンジーからの非侵襲的サンプリングの継続を行うための旅費に使用する。
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