本研究では、呼吸性アルカローシスを誘導する過呼吸を引き出す方法の違いが、呼吸性アルカローシスの状態下における運動開始時の酸素摂取応答速度にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とした。被験者は非喫煙の健常男性(22~24歳)であった。平成24年度は呼吸速度を20、30、または60回/分に制御したのに対し、最終年度では呼気終末二酸化炭素濃度を20 mmHgに維持した呼吸状態で、安静1分、10 Wでのベースライン運動4分、主運動6分、10 Wでの整理運動6分の自転車運動負荷試験を行ない、その際の呼吸・循環パラメータを測定して、特に主運動開始時の酸素摂取動態に関して解析を行なった。対照実験では自由な呼吸の下、運動負荷試験を行なった。主運動負荷強度は嫌気的代謝閾値における運動負荷を中強度として、低強度、中強度、または高強度の3種類を設定した。解析の結果、呼吸速度を調節した場合、呼吸速度が遅い場合に比べて、呼吸速度が速い方が運動開始時の酸素摂取応答が速くなることが示された。一方、呼吸速度及び一回換気量は任意にして呼吸終末二酸化炭素濃度を調節した場合、その濃度が低くなると対照実験に比べて運動開始時の酸素摂取応答が遅くなることが示された。これらの結果は、第37回国際生理学会大会他で発表された。本研究では更に、呼吸制御による循環血液ガス成分等の変化に関する研究が動物実験により開始されており、今後の進展が期待される。
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