研究課題/領域番号 |
24770237
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
下村 義弘 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60323432)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テクノ・アダプタビリティ |
研究概要 |
精神性発汗に伴う皮膚電気活動(EDA)のインピーダンスによる評価方法を検討した。一般的にインピーダンスはリアクタンスのうち誘導成分が無い場合は抵抗成分Z'と容量成分Z''から、周波数をfとするとZ(f) = Z'-jZ''(f)となる。この時、実数成分を横軸、虚数成分を縦軸にとるCole-Coleプロットでは、周波数が無限大から0まで変化した場合に複素平面上に円弧状の軌跡が現れる。この軌跡から周波数特性も含めたインピーダンスを検討することが可能である。実験では、200kHzから20Hzまでの範囲で拇指球掌側と小指中手指節間関節掌側の間のインピーダンスを計測した。安静(R条件)とバルサルバタスク(T条件)を交互に3回ずつ行った。バルサルバ法は深く息を吐いたあとにそのまま止めてこらえると精神性発汗が出現するものである。Cole-Coleプロットの結果は、R条件でZ(20)=95k-j56k、Z(100)=27k-j40k、Z(1k)=2.6k-j7.2k、T条件でZ(20)=48k-j10k、Z(100)=27k-j19k、Z(1k)=3.1k-j6.5k程度であった。これらから、抵抗成分にタスクが与える影響は比較的低周波数では認められるが、およそ100Hz以上ではほとんど見られず、1kHzを超える程度からは逆転することもあった。一方リアクタンス成分については広い周波数範囲でタスクの影響が明瞭であり、精神性発汗によって容量成分が減少する様子が顕著であった。精神性発汗の評価指標としてのリアクタンスの有効性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、新しい皮膚電気活動(EDA)の測定方法を開発し、被験者属性-ストレス-EDAの3者の関係を体系化してEDAによるストレス評価方法を確固たるものにすることである。当初目的では最初に従来方法を用いてストレス同期波形の詳細な分析を行う計画であったが初期段階でインピーダンス解析をすることで効率的にパラメータを絞り込むことができ、従来技術とも明確に比較検討できると考えた。その結果リアクタンス成分の有効性が示唆されたことは目的の遂行に早い段階で近づけたと考えている。ただし個人差の範囲などはまだ不明であるため、研究全体の進捗としてはおおむね順調との認識である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に複素インピーダンスの有効性について手応えが得られたため、第2年度はバルサルバタスクによる被験者実験を実施し、パラメータの絞込みとデータ蓄積を行う。その際に測定する指標は、従来の最も一般的な直流バイアスによるコンダクタンス、20~1kHz程度の可変周波数におけるリアクタンスとレジスタンスである。高速の周波数スイープや多重周波数波形による方法はEDAの一過性変動を検出するには遅く、しかし定常的成分を検討するには精度が高くはないため、最初の実験では特に有効な周波数を明らかにすることに注力する。次にその周波数を用いてEDAの一過性変動における波形の各種パラメータを測定指標ごとに算出し、被験者属性やストレス強度などとの多変量解析を行う。そして最終的にコンダクタンス波形上は一過性変動がみられない(おそらく3割から半数程度の)被験者について、EDAの測定を可能にするか、もし不可能であることが判明した場合は電気生理学的に説明することで、EDAによるストレス評価方法として確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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