研究課題/領域番号 |
24770237
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
下村 義弘 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60323432)
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キーワード | 精神的ストレス / ストレス評価 / 精神性発汗 / 皮膚電気活動 |
研究概要 |
精神性発汗に伴う皮膚電気活動(EDA)のインピーダンスによる評価方法を詳細に検討した。一般的にインピーダンスはリアクタンスのうち誘導成分が無い場合は抵抗成分Z'と容量成分Z''から、周波数をfとするとZ(f) = Z'-jZ''(f)となる。昨年度実験で精神性発汗の評価指標としてのリアクタンスの有効性がケースサンプルとして示唆されたため、本年度はより定量的に検討するための実験を以下の要領で行った。実験目的:バルサルバタスク(息こらえ)によって誘発される手掌の精神性発汗を電気的に計測し、いくつかの電気的パラメータと被験者属性(BMIや性格特性など)との関連を検討すること。被験者数15名。測定内容:一般的な直流コンダクタンスおよび周波数スイープによる複素インピーダンス。これら2つを左右の手に割り振り、両手で測定した。1試行は安静とバルサルバタスクのセットから成った。左右の手を交互に入れ替え(電極クリップを付け替えて)全部で4試行計測した。その結果、従来の直流コンダクタンスでは安静(R)とバルサルバ(T)条件で、変動係数は35.7と50.1であり有意に(t検定、p<0.05)T条件が高かったこれは従来の知見通りであった。一方Z'はおよそ10kHz以上で有意差が見られるが1kHz以上近辺から変動係数は50を超え個人差が周波数とともに大きくなることが顕著であった。1kHz以下の低周波では変動係数は小さいが有意差は認められなかった。一方高周波のZ''は変動係数が大きく、有意性もZ'よりも劣った。しかし1kHz前後のZ''は有意差は見られなかったものの変動係数は全測定の中で最小(R条件19.8、T条件22.4)であった。このように各被験者の平均値を用いた個人間解析では、最も有効な周波数帯域を見出すことができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、新しい皮膚電気活動(EDA)の測定方法を開発し、被験者属性-ストレス-EDAの3者の関係を体系化してEDAによるストレス評価方法を確固たるものにすることである。昨年度にリアクタンス成分の有効性が示唆され目的の遂行に早い段階で近づけたが、本年度の実験の結果から個人差の影響はやはり大きく、周波数にともなっての変動係数と有意性の一貫した挙動が認められない様子である。実験手技に工夫を要し時間を費やしたため解析結果は上記進捗のとおりであり、個人属性との関連の解析に至っていないため、研究全体の進捗としてはやや遅れているとの認識である。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度はバルサルバタスクによる被験者実験を実施しデータ蓄積を行った。特に有効な周波数を明らかにすることに注力して解析を行ったが、個人間の平均値解析では明らかにならなかった。最終年度はこのデータセットを用いて個人内での再現性の検討や個人属性を取り入れた多変量解析を行い、最終的にコンダクタンス波形上は一過性変動がみられない(おそらく3割から半数程度の)被験者について、EDAの測定を可能にするか、もし不可能であることが判明した場合は電気生理学的に説明することで、EDAによるストレス評価方法として確立する。
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