本研究の目的は、精神性発汗に伴う皮膚電気活動(EDA)によるストレス評価方法を確固たるものにすることであった。手掌の皮膚表面インピーダンスによる評価方法を検討した。一般的にインピーダンスは抵抗成分と周波数異存のリアクタンス成分からなる。24年度はリアクタンスの有効性がケースサンプルとして示唆された。25年度から26年度にかけていくつかの実験を行った。EDAとしてリアクタンスのうちキャパシタンス(容量成分)と直流コンダクタンス(抵抗成分の逆数)の比較に注目した。周波数は50 Hzから10 kHzまでスイープした。精神性発汗誘発刺激は30秒間のバルサルバタスクとし、安静と刺激を繰り返した。被験者特性として、身長、体重、特性・状態不安点数(STAI) 、タイプA行動パターン点数(東海大式生活健康調査表)を測定した。その結果、直流コンダクタンスには安静時と刺激時で有意差はなかったが、広帯域でキャパシタンスに有意差があった。キャパシタンスの変動係数は全周波数で直流コンダクタンスよりも小さかった。周波数50 Hzから1 kHzの時のキャパシタンスと手厚に強い正の相関(r≧0.7)があった。また全周波数においてキャパシタンスとタイプA行動パターン点数に弱い正の相関(0.7>r≧0.4)があった。結論として、電流到達深度を浅くするために高周波を避け、安静時と刺激時の測定値に有意差がありかつ変動係数が直流コンダクタンスよりも小さいものとして、皮膚キャパシタンス測定に適した周波数は1000から126、63.1から50.1 Hzであると考えられた。さらに、個人内でのストレスに対するEDAの反応は相対的には同じだが、個人間の再現性の低さの原因となる被験者特性は、手厚とタイプA 行動パターンであることが明らかとなった。
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