研究課題/領域番号 |
24780007
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小松 邦彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター寒地作物研究領域, 主任研究員 (20355655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ダイズ |
研究概要 |
葉柄が短いダイズ変異形質については遺伝解析によって責任遺伝子が座乗すると推定されている領域は第11染色体の約61kbの領域であることが既に分かっている。その領域でデータベース(Phytozome)上でアノテーションされている3つの遺伝子のゲノム塩基配列(上流側2.5kb以上、下流側1kb以上を含む)について変異系統とその野生型兄弟系統のゲノム塩基配列を解読した。次いで、既にゲノム情報が公開されている品種「williams82」との比較検討を含めて比較検討を行ったが、形態の変化を説明できる配列の変異は見出されなかった。一方、当該領域の解析の過程で、変異体とその野生型兄弟系統にはゲノムデータベースの情報にはなく、「williams82」ゲノムには含まれていない配列があることが推測された。現時点ではその部分に責任遺伝子がある可能性が高いと考えられる。 光環境に対する反応の調査では、蛍光灯で確実に変異形態が誘導されること、LED照明による赤色光、青色光、緑色光に対する反応で節間長については各色間で反応に顕著な差が見られることを明らかにした。しかし、LED照明では変異体の葉柄長が特異的に反応する色は見出されず、葉柄長は単独のある波長領域の光に反応しているわけではない可能性が示唆された。植物ホルモン施用試験では変異体に対してブラシノステロイドを用いたが、変異形態の回復は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では24年度で変異形態の責任遺伝子の候補を絞る予定であったが、データベース上でアノテーションされた遺伝子に形態の変化を説明しうる変異がないことから当初の目論見とは結果が異なっており、若干の軌道修正が必要になっている。解析の過程で当該領域に未知の配列があることが明らかにされ、その部分に責任遺伝子が座上している可能性が高いと考えられることから、その塩基配列を解読することで最終目標を達成できる可能性が十分にある。塩基配列の解読のみでなく、領域の絞り込みのために使用した大規模分離集団の後代を領域のさらなる絞り込みに使えるように準備し、今後、今後そういった材料も使いながら包括的に責任遺伝子の推定を進めることが出来うる体制を整えたこともあり、予想とは違う結果ながら十分な達成度があると考える。 光環境に対する反応の調査では当初計画通り実験を進め、その結果変異体の光に対する反応が単純なものではない可能性が示唆されてきた。また、植物ホルモン施用試験では、他種植物のブラシノステロイド合成遺伝子変異体と当研究で用いている変異体の形態の類似性からまず対象をブラシノステロイドにしぼり、計画通り複数回試験を行った。これら、変異体の生理的反応を調査する部分についても達成度は問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
変異体とその野生型兄弟系統のゲノム塩配列の比較については、責任遺伝子が座上すると推測される領域に見出された未知の配列の解析を中心に進める。また、それと並行し、大規模分離集団のいくつかの後代(当該領域で組換えあり)について、今までの解析で明らかになった当該領域のSNPsを調査し、さらなる領域の絞り込みを行って責任遺伝子推定の確度を上げる。 光環境に対する反応の調査では、各色のLEDを組み合わせる、あるいは最近安価になった高輝度LEDを用いて光強度を上げるなどして現在までとは異なる光環境を創出し、葉柄長に対する影響を評価していく。植物ホルモン施用試験では、やはり他種植物での変異体の形態がやや似るジベレリンやオーキシンに対象の中心を移し、変異体に施用して反応をみる。 なお、25年度については、急遽、比較的長期(10か月強)の海外研修が決まったため、十分な研究の進行ができない。日本にいる2カ月弱については精いっぱい解析を進めるが、26年度以降課題延長申請等も検討し、当初の目標を十分達成できるよう手を尽くす予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
未知領域の塩基配列解読は複数箇所を同時に進めることが出来ず進展が遅いため、使用する試薬等が減少し、結果として次年度に繰り越すこととなった。次年度以降、繰り越した資金も使用して粛々と解析を進めるとともに、場合によっては外部業者へ一部を委託するなどスピードアップも図る。
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