当課題はダイズの受光態勢の改善に応用しうる葉柄長の制御遺伝子のクローニングとその機能解析を目標とした。研究材料には葉柄が短い変異型系統とその野生型兄弟系統を用いた。課題開始以前の連鎖解析から、短葉柄形質が第13染色体の約61kbの領域(以降、目標領域とする)に座上する劣性遺伝子に制御されていることが明らかになっていた。 24年度にはゲノムデータベースで目標領域内に予測されていた3遺伝子について塩基配列を解読したが、変異型系統と野生型系統で形質の違いを説明しうる変異は見いだせなかった。一方、使用している全研究材料において、目標領域には未知の配列が散在していることが判明した。25年度は海外研修のため研究実施期間が2カ月弱と短くなった。目標領域の約7kbについて塩基配列の解読と比較を行ったが、形質の違いを説明しうる変異は見いだせなかった。 26年度は目標領域の約20kbについて塩基配列解読と比較を行ったが、形質の違いを説明しうる変異は見いだせなかった。そこで、本研究で得られた約40kbの配列について、アノテーションを試みたところ、ゲノムデータベースで公表されていない部分にレトロトランスポゾンと2つの遺伝子が予測された。また、レトロトランスポゾン周辺はメチル化されているが、変異型系統ではメチル化の程度が低い傾向にあり、2遺伝子の発現量が高いことが明らかになった。新規に予測された遺伝子のうち一つはトウモロコシで見出された葉の委縮にかかわる遺伝子と相同性が高かった。これらのことから、短葉柄化は新たに見出された2遺伝子のいずれかまたは両方の発現量が増えることで起こる可能性が高いと考えられた。 遺伝子の機能解析については24年度にブラシノステロイド、26年度にジベレリンを短葉柄系統に施用し、その効果を調査したが関連性を明確に示す結果は得られなかった。
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