本研究では、新規遺伝子発現抑制システムRNA silencing inducible sequence (RSIS)について解析する。RSISは約100 bp程度のヒトグルカゴンペプチドをコードするDNA配列であり、その5'側と3'側に抑制したい遺伝子の一部の配列を融合して発現させると、転写後発現抑制を誘導できる。ヒトグルカゴンペプチド以外にも、このようなサプレッション効果のある配列はいくつか見つかっており、その他にもある程度の頻度で存在すると考えられる。しかし、シロイヌナズナではその抑制の効果はみられなかった。そこで、まずシロイヌナズナにおいてもサプレッション効果がある配列をスクリーニングすることにした。方法としては、100 bp程度のランダムな配列のDNAを作製し、その5’側と3’側にGFPの一部を融合したライブラリーを作製する。これを、GFPを発現するシロイヌナズナに導入して、GFPが光らなくなる(=サプレッションが起こっている)ことを指標として、新規サプレッション配列をスクリーニングする。これまでに500ライン以上のライブラリー導入形質転換シロイヌナズナを得ており、そのうち、サプレッションが起こる配列を数個得た。これらの形質転換体ではmRNAレベルでGFPの発現が抑制されており、互いの配列に弱い相同性が確認された。small interfering RNA (siRNA)の蓄積を調べたところ、弱いシグナルしか確認できなかった。イネにおいては、RSIS導入形質転換体において、21-24 ntのsiRNAが蓄積していた。このことから、今回シロイヌナズナで発見したサプレッション配列は、イネとは異なるメカニズムのものと考えられる。一方、イネによる実験では、RSISとその他のサプレッション配列を調べたところ、リードスルーが高い頻度で起こっており、転写終了異常によりサプレッションが引き起こされることがわかった。
|