研究課題/領域番号 |
24780010
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
遠藤 真咲 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (40546371)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 形質転換 / ジーンターゲッティング / 植物 / アグロバクテリウム / DNA二重鎖切断 |
研究概要 |
アグロバクテリウムを介して植物ゲノム中に外来遺伝子を導入する場合、DNA二重鎖切断部位に挿入されやすいことが報告されているが、その分子機構については明らかになっていない。そこで、植物核内へ運ばれる、DNA-タンパク複合体(T-complex)のなかで、植物ゲノム中のDNA二重鎖切断部位に結合する因子が存在するか否かをChIP assayにより明らかにするために、まずは実験材料となる植物体を作成した。特定の配列を任意のタイミングで切断できるよう、メガヌクレエースであるI-SceIの認識配列および、誘導的I-SceI発現カセットを形質転換したシロイヌナズナを作出し、b-estradiol処理によるI-SceIの発現誘導で効率的にI-SceI認識配列が切断される系統を選抜した。 この植物体からプロトプラストを調製し、T-complexに含まれるVirD2と、YFPのN末端のキメラタンパク質の発現コンストラクトをPEG法によって導入した後、b-estradiol処理することでVirD2発現とI-SceI siteにおけるDNA二重鎖切断誘導のタイミングを合わせることができることを確認した。YFP N末を認識する抗体を用いたクロマチン免疫沈降に着手した。 また、DNA二重鎖切断における相同組換えの促進はジーンターゲッティング(GT)の効率化に必須であるが、その効果的な策は見つかっていない。そこで、迅速かつ正確にGT効率を評価できる系を構築し、GT効率が高い変異体または、薬剤処理を見出すことを試みる。前述したシロイヌナズナでは、I-SceI認識配がプロモーターを有さないLuc遺伝子内に配してある。そこでGTによりLuc遺伝子上流にプロモーターを付与できるようなGTベクターを構築し、GTベクター形質転換時にI-SceI発現誘導をかけることで、GT細胞が検出できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ChIP assay, GT実験共に、材料となる植物体において、DNA二重鎖切断誘導のON, OFFがきちんと行えることが成功の鍵となる。上記の条件を満たす植物体の選抜に時間を費やしたが、約100個体の独立した形質転換体の中から、I-SceI認識配列を含むLuc遺伝子および、誘導型I-SceI発現カセットを1コピー有し、且つb-estradiol処理によってのみ、I-SceI認識配列の切断が生じる系統を2系統選抜することができた。これら2系統では、b-estradiol処理によるGT効率の向上も再現性があり、また、植物体全体、根、プロトプラストのいずれにおいても二重鎖切断の誘導がかかることも確かめられた。ChIP assayに関しては、プロトプラストを用いてPEG法によりVirD2-nYFPを発現させる際の形質転換効率や、少ない細胞からのDNA-タンパク複合体の免疫沈降など、課題もあるが、各ステップの条件検討を行うなど、概ね順調に進展している。ChIP assayと同じ植物材料を用いてGT効率評価系を構築する課題においては、Lucの発現を指標にGT細胞を検出できること、I-SceIの発現誘導によりGT効率が向上することを確認している。GT効率の向上が期待される、DNA損傷修復関連因子変異体との交配を進めており、進捗は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
ChIP assayに関しては、T-complexに含まれ、DNAと共に植物核内に移行すると考えらる、アグロバクテリウム由来のタンパク質であるVirD2およびVirE2がDNA二重鎖切断部位に結合するか否かを検証する。ChPI assayに用いる材料として、VirD2またはVirE2を発現するプロトプラストを大量に獲得する必要があるので、PEG法によるVirD2, VirE2発現コンストラクトの形質転換の条件についても検討する。ジーンターゲッティング効率評価系の構築ならびに、ジーンターゲッティング効率が高い変異体、薬剤処理の検出については、染色体内相同組換え効率が高い変異体を複数入手しているので、それらの変異体と評価系植物の交配を行い、root transformationにより、根にGTベクターを含むアグロバクテリウムを感染させる際にb-estradiolを処理することで、標的遺伝子切断を伴うGT実験を行う。また近年、ジーンターゲッティングベクターをアグロバクテリウム経由で個々の細胞に送り込むのではなく、最初に植物ゲノム中に挿入しておき、標的遺伝子を切断するのと同時に、GTベクターを切り出すGT法(in planta GT) が発表され、難形質転換植物にも有効なジーンターゲッティング法として注目されている。そこで、H24年度に構築したGTベクターを改変し、標的遺伝子との相同配列の隣接部位にI-SceI 認識配列を付加したGTベクターを構築する。GTのアクセプターサイトならびに、誘導型I-SceI発現カセットを有するシロイヌナズナに、改良GTベクターをfloral dip法で形質転換した後、b-estradiol処理を行うことで、GTベクターの切り出しならびにGTが生じる効率を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ジーンターゲッティング(GT)が生じた細胞の検出はルシフェラーゼ(Luc)の発光検出により行うため、基質となるルシフェリンを購入する。また、Lucの発光が検出された細胞でGTが生じていることを遺伝子レベルで解析するため、DNA抽出やPCR, Southern blot, シークエンス解析などの実験を行う予定であり、これらの実験に必要な試薬や消耗品を購入する。ChIP assayに関しては、植物体の栽培、プロトプラストの調製、高純度plasmidの調製、PEGによる形質転換とb-estradiol処理、ホルムアミドによる架橋や免疫沈降、脱架橋、タンパク分解とDNA回収、Real time PCRによる共沈DNAの解析等、実験の過程が複雑であり、それぞれの過程において必要な試薬の種類も多い。そこで、これらの実験に必要な試薬や消耗品を購入する。
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