研究課題/領域番号 |
24780013
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
荒木 卓哉 愛媛大学, 農学部, 准教授 (10363326)
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キーワード | 無機態窒素 / 乾物生産 / 窒素吸収 / 総根長 |
研究概要 |
本研究初年度において,農業生物資源研究所コアコレクション69品種を用いて異なる無機態窒素(アンモニア態窒素と硝酸態窒素)条件で栽培した場合の乾物生産を調査して特徴的な4品種(DAVAO1,ARC,TUPA,VANDARAN)を抽出できた.今年度は,これら4品種を用いて,異なる無機態窒素を施用した場合の根圏温度の影響について検討するために,水耕栽培の培養液温度として20℃,27℃および33℃の3条件を設け,乾物重,蒸散速度,総根長および根の太さについて調査した.乾物重は無機態窒素条件によって温度反応が異なった.すなわち,硝酸態窒素区では温度条件が高くなるとともに乾物中の増加が認められた.これに対してアンモニア態窒素区では水温が27℃において乾物重が最も高い値を示した.また,各品種の乾物重は各温度条件で硝酸態窒素区においてアンモニア態窒素区よりも高くなった.総根長は,アンモニア態窒素区および硝酸態窒素区ともに温度条件が高くなるとともに長くなった.また,各温度条件において硝酸態窒素区がアンモニア態窒素区よりも長い総根長を示した.総根長を根の太さ別にその割合について検討すると,硝酸態窒素区では細い根の割合が多かった.以上のことから硝酸態窒素条件において各温度において認められたアンモニア態窒素区を上回る乾物生産は,根をより長くすることで根の表面積を拡大し,養水分吸収体制を有利にしていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調と判断している.その理由としては初年度において無機態窒素の施用に対する反応が異なる4品種を選定できたことおよびその4品種を用いて乾物生産,窒素吸収および根の形態について詳細に解析ができたからである.また,根圏温度の違いによる無機態窒素条件による乾物生産および根の特性についても明らかにすることができた.イネの無機態窒素施用に対する乾物生産特性,窒素吸収については調査の時期,生態型によって異なる報告が多く.無機態窒素施用に対する反応についてこれまでに得られた結果と既報の結果を含めて,その特長について整理することができると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は窒素安定同位体を用いて無機態窒素の吸収とその器官配率について検討した.この解析を進めるとともに,根および葉身における無機態窒素代謝関連酵素活性を測定し,個体内の窒素の吸収,代謝,輸送,利用・蓄積について検討する.また,今後のイネ栽培における水利用効率の向上に向けた硝酸態窒素嗜好性の高いイネの栽培に関する特徴についてまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
計画していた無機態窒素代謝関連酵素(硝酸還元酵素,グルタミン合成酵素/グルタミン酸合成酵素)活性の測定を行うことができなかった.これは,総根長の調査および窒素安定同位体の分析に時間を多く費やしたためである.そのために,予め酵素活性測定のために計上していた分析試薬を購入しなかったために,次年度使用額が生じた. 計画当初の予定通り無機態窒素代謝関連酵素活性測定のための分析試薬の購入に使用したい.
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