研究課題/領域番号 |
24780015
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山根 浩二 近畿大学, 農学部, 講師 (50580859)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ダイズ / 湿害 / 活性酸素 / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
本年度の目的は、ダイズ幼植物に湿害を与えた後、器官別の活性酸素(過酸化水素とスーパーオキシドラジカル)の発生量と生成部位を経時的に測定し、とくに多い部位ではマイクロスライサーを用いて組織レベルで観察することである。実験に用いたダイズ品種は、近畿地方で栽培されているサチユタカ(奈良県奨励品種)、タマホマレ(滋賀県奨励品種)、エンレイを用いた。真砂土を充填した1/5000 aワグネルポットにダイズを播種し、1週間ダイズを生育させた後、ポットの上端まで水を入れて2週間湿害を与えた。湿害中と湿害解除後に酸化ストレスの指標である過酸化脂質量を器官別に経時的に調べたが、3品種とも対照区と比較して顕著な差は観察されなかった。また、活性酸素量の顕著な増加も観察されなかった。活性酸素染色を行って組織レベルで観察したところ、根端部の皮層付近でわずかながら染色が観察された。これらの結果より、栽培品種のダイズ幼植物は、湿害を受けても活性酸素の過剰生成やそれによる致命的な障害は生じないことが示唆された。 ダイズ幼植物に湿害を与えても、湿害中や湿害直後には障害や過剰活性酸素生成は観察されなかったため、その後の生育を調査することとした。上記の方法で湿害を与えた後、70日間ダイズを生育させた。その結果、生育初期に湿害を受けたダイズでは、最上位展開葉のクロロフィル含量が有意に減少した。また、抗酸化酵素であるカタラーゼとアスコルビン酸ペルオキシダーゼ活性を測定したところ、湿害処理をした植物体の活性が対照区と比較して減少していた。このことから、生育初期にダイズが湿害を受けると、生育後期において生育阻害が引き起こされることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、ダイズが生育初期に湿害を受けた場合、活性酸素生成が増大して障害を受けることを予想していたが、近畿地方で栽培されているダイズ品種では、幼植物期に湿害を受けても活性酸素による酸化ストレス障害は引き起こされなかった。そのため、栽培品種のダイズは、湿害を受けても湿害中や湿害解除後に過剰な活性酸素生成や酸化ストレス障害は引き起こされないことがわかった。これは、当初の予想とは反する結果であったが、ダイズ湿害研究において新たな知見を得ることができた。 生育初期に1週間程度の短期湿害をダイズに与えると、ストレス期間中や解除直後には障害は引き起こされないが、生育後期に最上位展開葉におけるクロロフィル含量の低下や抗酸化酵素活性の低下が新たに見出された。このことは、これまでのダイズ湿害研究では報告されていないことであり、新たな知見であると言えよう。 今年度のこれらの成果より、当初の予想と反する部分はあったが、ダイズ湿害研究について新たな知見を得ることができ、研究はおおむね順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は以下の2点について研究を推進していく。 (1) 根端部における活性酸素生成部位の特定 根端部において、わずかではあるが活性酸素生成が観察されたため、その部分において電子顕微鏡レベルの活性酸素染色を行い、発生部位をオルガネラレベルで観察する。具体的には、cerium chloride法を改変した方法を用いる。cerium chlorideの細胞膜透過性が問題となるが、細胞膜は固定を行うと選択透過性が失われ、物質の取り込みが促進される。そのため、固定とcerium chloride処理を同時に行うことでシンプラスト部分の染色が可能になると考えられるため、この方法を実施していく。 (2) ダイズ生育初期の湿害が後期生育に及ぼす影響 ダイズが生育初期に受けた湿害の影響は、期間を経てから現れることが明らかとなった。しかし、その原因は明らかになっていない。昨年度の実験から、生育初期に湿害を受けたダイズは、木部液の出液速度が著しく低下していた。このことから、根圧の低下が葉の黄化を引き起こす一つの原因であると考えられた。そこで、根箱法を用いて、湿害を受けた植物の根の状態を経時的に調査する。また、最上位展開葉の抗酸化酵素活性が低下していたが、過酸化水素を消去するカタラーゼとアスコルビン酸ペルオキシダーゼ活性以外の抗酸化酵素も測定し、抗酸化酵素活性の低下が原因となり、葉の黄化が促進されることを調査していく。さらに、初期に受けた湿害の影響は、最終的にどのくらいの減収を引き起こすのかを調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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