研究課題/領域番号 |
24780018
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
熊谷 悦史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター生産環境研究領域, 研究員 (80583442)
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キーワード | 高CO2濃度 / 硝酸還元 / 亜硝酸還元 / アンモニア同化 / 乾物生産 / 光合成 / 窒素吸収 |
研究概要 |
近年、将来の高CO2濃度条件においては植物のNO3-利用が抑制される為、肥料としてのNH4+の重要度が増すと報告された。本研究では高CO2を高度利用する施肥法の方向性を示す為に、数種の作物の高CO2応答に及ぼすNO3-、NH4+施用の影響を明らかにする。本年度は、以下の2点について結果を得た。 1.通常CO2および高CO2と、硫安区、硝カル区および尿素区を設け、組み合わせ6条件でエンドウとホウレンソウを栽培し、栄養生長期の乾物重、粗タンパク含量、葉のNO3-濃度、NH4+濃度、硝酸還元酵素(NR)、亜硝酸還元酵素(NiR)、グルタミン合成酵素(GS)活性を調査した。両種において、硝カル区、尿素区では高CO2による地上部重の増加が見られたが、硫安区ではCO2の影響が見られなかった。尿素区や硫安区の値が硝カル区のそれを上回ることは無かった。粗タンパク含量に関しては、ホウレンソウでは硝カル区でのみ高CO2による低下が見られ、エンドウでは硝カル区と尿素区で高CO2による低下が観察された。ホウレンソウでは硝カル区において、高CO2により葉NO3-濃度が上昇し、NRとNiR活性が低下した。エンドウではそれらにCO2の影響は見られなかった。エンドウでは高CO2下でNH4+濃度が低下し、GS活性が増加した。一方、ホウレンソウではそれらにCO2の影響は無かった。以上のように、窒素代謝の高CO2応答には明確な種間差が存在し、「高CO2条件においてはNO3-利用が抑制される為、NH4+の重要度が増す」とは必ずしも言えないと結論した。 2.溢泌液中の窒素濃度計測による窒素吸収速度の評価法については、溢泌液を十分な量を得ることが出来ないことが分かった。その代替として重窒素を利用した手法を適用した。また、同化箱法による葉からのNH3放出の計測システムを作成し、作物2種に適用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にあげた1)は、当初の実施計画に予定していたものであり、高[CO2]下では、硝酸窒素利用が阻害されるので、NH4+の重要性が増すという説は多くの作物種を対象に一般化できないと結論した。また、NO3-還元やNH4+同化の高[CO2]応答には明確な種間差があることを見出した。2)に関しては、当初予定していた窒素吸収の評価手法の確立には至らなかったが、別手法を試行した。NH3放出の評価法については確立できたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ホウレンソウでの高CO2による粗タンパク含量低下には、NRとNiR活性抑制が部分的に関与していると考えられた。2014年度は、ホウレンソウとエンドウの窒素吸収およびNH3放出の高CO2応答に及ぼす無機窒素形態の影響を解析し、高[CO2]による粗タンパク含量の低下への窒素吸収とNH3放出の関与について精査する。両種を対象に、通常[CO2]および高[CO2]と、NH4+区とNO3-区(窒素源はそれぞれNH4ClとKNO3とした水耕条件)の組み合わせ6条件で栽培し、栄養生長期の地上部重、地下部重、粗タンパク含量(ケルダール法)、蒸散速度(重量法)、窒素吸収速度(15N分析)、光合成速度、NH3放出速度(同化箱法)を調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額2,673円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度の研究費と合わせて、研究計画遂行の為に使用する。 窒素吸収速度評価に必須である培養液作成の為の試薬購入に使用する。
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