研究課題/領域番号 |
24780021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺田 徹 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (00619934)
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キーワード | 里山 / 農的活動 / 空閑地 / バイオマス / レジリエンス |
研究概要 |
今年度は都市郊外におけるエネルギー・食料自産自消に向けた計画論構築のための調査を行い、以下の3点の成果を得た。 1)長野県伊那市における薪による小規模バイオマス利用の実態把握:全国でも有数の薪ストーブ導入地域である長野県伊那市をケーススタディとして、薪の利用実態とエネルギー自給に対する貢献を定量的に評価した。また、市民によるエネルギー自産自消活動の支援を目的とした伊那市の取り組み(伊那市フォレスタークラブ)を調査し、先進事例として分析・評価した。成果は国内学会に投稿し、査読付き論文として受理された。 2)持続的なバイオマス利用のための里山の森林土壌調査:地上部バイオマスの持続的な収穫を支える土壌有機炭素の定量評価を行うため、千葉県柏市の大青田の森をケーススタディとして、土壌サンプリングを行った。今年度は重量、密度、全炭素量、全窒素量などの基礎的な測定を行った。 3)食料の自産自消のための小規模物質循環の評価:空閑地の菜園化に向けては土壌改良が必要な場合が多い。そのための資材をごく小規模な範囲から得るには、家庭から発生する窒素源(厨芥)や、里山から得られる落葉、木質チップなどの炭素源(バイオマス)などの活用が不可欠である。今年度は、これらの資材の発生量の調査を行うとともに、両者の適切な混合による有機堆肥の製造方法について、民間企業の協力を得て実験サイトを構築し、データの取得を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、食料の自産自消に資する事例として、空き地の菜園化を取り上げ、それを支援する施策として柏市のカシニワ制度を調査した。続いて今年度は、エネルギーの自産自消に資する事例として、伊那市の薪による小規模バイオマス利用の事例を取り上げ、エネルギー自給に関する定量的な評価と、それを支援する施策の調査を行った。 以上の2点により、食料、エネルギーそれぞれに対して、自産自消の推進に向けた支援制度や社会システムのありようを考察することができており、当初の目標は達成されていると考えている。 これに加え、最終年度に、これまでの成果を活用して、エネルギー・食料の自産自消に適した都市郊外ランドスケープ(土地利用パターン)を明らかにすることにより、当初の予定どおり、社会システム・空間システムの両側面から、ランドスケープの再編に向けた計画論を提示することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究の総まとめとして、エネルギー・食料の自産自消による郊外ランドスケープの再編に向けた計画論を、社会システム・空間システムの両面から提示する。社会システムについては、これまでの2年間の検討で十分な成果が得られているため、最終年度は、主に空間システムの検討を行う。 計画のスケールは基礎自治体(市区町村)とし、GISを用いて、エネルギー・食料の自産自消に適したランドスケープのありよう(土地利用パターン)を明らかにする。具体的には、エネルギーについては、供給源としての里山と、利用場所である一般家庭とのバランスを複数の自産自消シナリオの元で評価する。一方、食料については、炭素供給源としての里山、窒素(厨芥)供給源としての一般家庭、その還元先としての空閑地の3つの土地のバランスを評価する。 これらの評価により、エネルギーおよび食料の生産と消費がバランスする地域の特徴を明らかにすることができ、そうした地域をモデルとしたランドスケープ再編のありようを示すことが可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予定していたGISを用いた空間データ分析の一部について、解析用のデータの取得に遅れが生じ、そのための人件費・謝金が未執行となり、該当の残額が生じた。 来年度は空間データ分析を中心として検討を進める予定のため、解析用のデータが取得され次第、すぐに分析を行い、その補助のために、昨年度未執行となった予算を利用する。
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