研究課題/領域番号 |
24780023
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
北村 嘉邦 信州大学, 農学部, 助教 (90578139)
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キーワード | 花葉 / 延命 / 気孔 |
研究概要 |
平成25年度には以下の3点について調査した。以下に各項目に関して報告する。1.気孔伝導度の変化をもたらす気孔の開閉状況の変化 維持現象の誘導によって高い気孔伝導度を示すがく片と、維持現象誘導前の気孔伝導度が低い状態のがく片の背軸面表皮のレプリカを作製し、表皮に存在する気孔の開閉状況を調査した。維持現象が誘導されたがく片では開放状態にある気孔が多く見られ、維持現象誘導前のがく片では閉鎖された気孔が多く見られた。すなわち、維持現象の誘導によってがく片は気孔の開閉制御能力を獲得することを確認した。2.葉化と維持現象の違い 1.において、がく片は維持現象の誘導により気孔の開閉制御能力を獲得することを確認したため、維持現象の誘導はがく片から葉への生理的な変化を誘導するのではないかと考えた。そこで、ファイトプラズマの感染によってがく片が葉化したアジサイと維持現象が誘導されたがく片について、気孔伝導度および組織構造を比較し、相違点と共通点を調査した。葉化したがく片については維持現象が誘導されたがく片と比較して、高い気孔伝導度、高い葉緑体含量、組織構造における柵状組織の分化、の3点が確認された。すなわち、維持現象の誘導によってがく片から葉へと生理的に変化するが、完全な葉への変化が起こるわけではないではないことが示された。3.アジサイ以外の維持現象が誘導される植物種における調査 アジサイ以外の維持現象が誘導される植物種として、クリスマスローズをとりあげ、維持現象の誘導によって気孔伝導度の変化が起こるかどうか、確認した。クリスマスローズにおいても、維持現象が誘導された花器官では維持現象誘導前の花器官と比較して高い気孔伝導度を示した。気孔伝導度の上昇は、維持現象発現の指標として、広範の植物種に応用可能である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初提出した研究計画とは異なる進展とはなっているが、維持現象について未知であった点の解明、広範の植物種について維持現象誘導の有無を判断する指標に関する知見、がく片と葉と言う相同器官への置き換えが起こった個体との比較によるデータ蓄積の進展、など、新たな視点からデータが蓄積されている。よって、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
維持現象の誘導による、がく片における組織構造の物理的な強化の有無については未だ調査できていない。また、維持現象の誘導が切り花の長期延命につながる原因については明らかにできていない。前者については、透過型電子顕微鏡を用いた組織構造の検鏡、後者については、光合成能力の獲得を視野に光合成能力を測定し、明らかにしたい。また、昨年度の調査において、特に維持現象が発現しにくい系統を見いだしたため、維持現象が発現しやすい数系統との比較調査を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも安価に物品が購入できたため、ごく小額の未使用額が生じた。 平成26年度分と併せて使用する。具体的には、農業資材の購入時に本年度予算とともに使用する。
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