研究課題/領域番号 |
24780023
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
北村 嘉邦 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90578139)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アジサイ / 切り花 / 花葉維持 |
研究実績の概要 |
調査内容:平成26年度中は、花葉維持現象の誘導による切り花の長期延命に、花葉からの蒸散抑制が関与する可能性について調査した。具体的には、16品種のアジサイを用いて、維持現象誘導前および後の切り花の花持ち、花葉における気孔伝導度を比較し、維持現象の誘導に伴う切り花の花持ちの変化と気孔伝導度の変化との間の相関関係の有無を調査した。 調査結果:維持現象誘導前のアジサイ切り花の花持ちは約7から29日であったのに対し、維持現象誘導後のアジサイ切り花の花持ちは約9から70日であった。維持現象の誘導によって花持ちが有意に延長された品種は6品種であり、それ以外の品種では花持ちに有意差は見られなかった。2品種を除いて、維持現象の誘導に伴って気孔伝導度は有意に増大した。維持現象の誘導に伴う花持ちの変化と、気孔伝導度の変化の程度との間には、有意な相関は見られなかった。 考察:維持現象誘導に伴う切り花の花持ちの延長は、維持現象が起こる全ての品種で起こるわけではなく、一部の品種に限られると考えられた。また、維持現象に伴って気孔伝導度の増大が起こることから、維持現象の誘導に伴う花持ちの延長には、蒸散抑制は関与しないことが明らかになった。維持現象の誘導後も切り花の花持ちに変化が見られない品種と花持ちが延長される品種を、花葉からの蒸散量とは異なる視点から比較することが、維持現象の誘導に伴って起こる切り花の花持ちの延長機構について明らかにする糸口となるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
維持現象の誘導に伴う切り花の花持ちの延長に、蒸散抑制が関与していないことを確認することができた。当初の仮説とは異なる結果が得られたことから、順調な進展とは評価し難い。一方、蒸散抑制とは異なる視点から、維持現象の誘導に伴う切り花の花持ちの延長に関与する要因の候補を見いだしている(今後の研究の推進方策に記述)ことから、やや遅れている、の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在、蒸散抑制に替わる切り花の花持ち延長に関与する要因の候補として、組織構造の補強に注目している。維持現象誘導前後の花葉の組織構造に、サフラニンの染色性の相違を見いだしており、細胞壁の物理構造の二次的な補強の存在を疑っている。今後は、サフラニン染色性の変化を指標とした維持現象誘導様相の可視化と、in vitroにおける維持現象の誘導を組み合わせて実験系を構築し、維持現象の誘導メカニズムの解明に用いる適切なサンプルを確保する。
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