装飾花の開花ステージとアジサイの萼片がアンティーク化する際の仮導管の成熟程度との関係について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて調査した。その結果、開花終了直後の萼片の仮導管は生細胞であったものの二次細胞壁の肥厚が見られ、開花終了約2週間後の萼片では仮導管は二次細胞壁を持つ死細胞となっていた。以上から、アジサイの萼片では、アンティーク化開始直後から仮導管の成熟がはじまり、萼片の緑色化が終了するアンティーク化完了後には仮導管の成熟が完了することが明らかになった。 In vitro環境下で萼片のアンティーク化を誘導する実験系を立ち上げた。この実験系を活用することで、遮光条件でのアンティーク化の誘導が可能になり、葉緑体の分化を抑制しつつ萼片のアンティーク化を誘導することが可能になった。これにより、萼片に着色がない品種を用いて色水の吸水試験をおこない、萼片に存在する通導組織の水分輸送能力を確認することが可能になった。 In vitro環境下で葉緑体の分化を抑制した状態でアンティーク化した萼片を用いて、吸水試験を行った。具体的には、装飾花から得た萼片の基部を色水につけ、吸水させることで、萼片の吸水能力の有無を調査した。その結果、アンティーク化前の萼片では色水の吸水が見られなかったのに対し、アンティーク化後の萼片では短時間のうちに色水を吸水し、萼片内の水分の通導能力が高まっていることが示唆された。
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