研究課題/領域番号 |
24780025
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
渡辺 貴史 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (50435468)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農的利用 / 斜面市街地 / 非建ペイ地 / 環境保全意識 / 地域資源管理 / 土地利用調整 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的である農的に活用された市街地内緑地の実態については,長崎県長崎市の斜面市街地における空家除却後にオープンスペースとして整備された非建ペイ地の維持管理の実態を明らかにした.その結果,維持管理の状況は,非建ペイ地の舗装状況(土系かそれ以外か)によって異なることを明らかにした。また本研究対象を含む都市近郊地域の空間を対象とした研究のレビューを行い,本課題の位置づけを明らかにした.これらは,先行研究の不備を補完し本課題の位置づけを明示した点から,重要な成果といえる. 第二の目的である農的に活用されている市街地内緑地の環境保全機能の評価については,前年度に引き続き,長崎県長崎市の都市住民を対象に実施した農的利用状況と環境保全意識に係るアンケートの解析を進めた.その結果,農的利用を行う都市住民の比率は,大都市圏内の都市(千葉県柏市)と大きく変わらない等の成果が得られた.これらは,地方中核都市における農的利用を行う都市住民の特性を明らかにした等の点から先行研究の不備を補完した点において,重要な成果といえる. 第三の目的である市街地内緑地の農的活用の維持・推進に資する政策の検討をめぐる主要な成果については,本研究対象を含む都市近郊地域を対象にした法制度に関わる研究レビューを行い,法制度に関わる研究の今後を展望した.その結果,近年は,景観計画等による異なる土地利用制度の総合的な運用の可能性を検討した研究や土地利用調整と地域資源管理を一体的に捉えた研究にみられる通り,制度間及び制度と地域資源管理の統合を志向する研究が数多く行われていた.これらからは,地域資源管理の一手段といえる農的利用と農的利用が展開される様々な地目の空間調整を一体的に捉える研究が必要なことが示唆された.これらは,政策に係る今後の研究の方向性を明示した点において,重要な成果といえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,下記に示す通り交付申請書に記載した3つの研究の目的に対して,一定の成果を上げている,あるいはデータを収集し解析を行っているといえる. (1)第一の目的である農的に活用された市街地内緑地の実態については,交付申請書の研究計画・方法に記載した斜面市街地の空家除却後にオープンスペースとして整備された非建ペイ地の維持管理の実態を明らかにしたこと. (2)第二の目的である農的に活用された市街地内緑地の環境保全機能の評価については,長崎県長崎市の都市住民を対象とした農的利用状況と環境保全意識の計測を目的とするアンケートの解析結果の特性を大都市圏の知見との比較を通じて明らかにした点において,先行研究の成果を補完する成果を上げたこと. (3)第三の目的である市街地内緑地の農的活用の維持・推進に資する政策の検討については,都市近郊地域を対象にした制度に関わる研究レビューを通じて,政策に係る今後の研究の方向性を明示したこと. 上記から本研究の「研究の目的」の達成度は,「おおむね順調に進展している」と判断される.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,これまで一貫して行ってきた3つ研究課題に係る調査及び解析を完了させて,それらを統合することにより,地方都市の市街地内緑地の農的活用に関わるガイドラインを作成する予定である.なお得られた成果については,関連学会誌(農村計画学会誌,ランドスケープ研究等)に投稿及び発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,農的利用状況と環境保全意識に係るアンケートの解析が遅れたために,論文投稿及び発表を実施できなかった.そのために,論文投稿用及び国内学会における発表用の旅費のために確保して置いた予算を余らせることとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年次は,アンケート解析のために人件費を使用する予定である。また取りまとめた成果を投稿する際に必要な投稿料や国内学会における研究成果発表のために旅費として使用するほか,地方都市の市街地内緑地の農的活用に関わるガイドラインの印刷費にも活用する予定である.以上から今年度の未執行分は,取りまとめた成果をより充実したものにする活動に充てることによって,消化する予定である.
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