研究課題/領域番号 |
24780027
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
黒田 有寿茂 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 講師 (30433329)
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キーワード | 海岸植生 |
研究概要 |
平成25年度は山陰海岸とその周辺における海浜(砂浜・砂丘)を対象に物理的計測を行った。具体的には水準測量による高さの測定、ふるいを使用した土壌(砂礫)の粒径組成の測定を行った。また、海水浴場化されている海浜の管理部署(地方自治体の観光課等)を対象に、管理・利用条件に関するヒアリングを実施した。これらの情報と、平成24年度に収集した海浜の植物相、土地利用区分等のデータをもとに、海岸植物の地理的分布傾向および種多様性と海岸環境との関係について解析を行った。海岸植物の抽出の基準は澤田ほか(2007)に従った。 調査・解析の結果、計41種の海岸植物が認められた。ハビタット別にみると、砂浜・砂丘・礫浜生の種が29種、岩場・海崖生の種が6種、海岸風衝草原・海岸低木林生の種が4種、塩湿地生の種が2種であった。砂浜・砂丘・礫浜生の種に着目すると、最も高頻度で出現した種はハマヒルガオであり、その分布は人為的改変の程度に関わらず広域にわたっていた。一方、出現頻度のごく低い種として、絶滅危惧種としても記載されているビロードテンツキ、イソスミレ、ハマウツボなどが認められた。これらの種は海浜の面積や高さが大きく、人為的改変の程度の小さい海岸域に分布が限定されていた。海岸植物全体の種多様性については、後者と同様、海浜の面積や高さが大きく、人為的改変の程度の小さい海岸域で大きい傾向が認められた。これらの結果から、希少性のある海岸植物の分布や海岸植物の種多様性は、海岸域の大きさや環境条件の多様性、人為的インパクトの大小に影響されることが示唆された。一方、粒径組成や管理・利用条件といった因子は、海浜内における海岸植物や種多様性の分布に影響していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は平成24年度に完了できなかった海岸域の物理的計測を中心に行った。このため、平成25年度に予定していた植生調査、群落区分・植生図の作成、ヒアリングの実施のうち、植生調査、群落区分・植生図の作成を実施することができなかった。研究目的の達成に向け、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度にデータ収集を完了することができなかった植生調査、群落区分・植生図の作成のうち、植生調査を最優先に取り組む。植生図の作成については実施が困難となる可能性もあるが、その場合は特定の植物種の分布図などに変更して対応し、研究の推進に必要なデータの収集・蓄積を図る。平成26年度当初の予定である観光客へのアンケート調査、調査・解析結果や取り組み事例を共有するためのワークショップの開催については、植生調査の進捗状況に留意しながら規模や方法について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に予定していた調査のうち、植生調査、群落区分・植生図の作成を完了させることができず、このことにより次年度使用額が生じた。 平成26年度は、当初の研究計画に加え、平成25年度に完了させることができなかった植生調査を重点的に行い、全額執行する。
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