研究課題/領域番号 |
24780028
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
池浦 博美 明治大学, 農学部, 助教 (10440158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘッドスペース揮発性成分 / モンシロチョウ / アブラナ科植物 |
研究概要 |
モンシロチョウメス成虫がアブラナ科植物を特異的に探索する要因としてアブラナ科植物キャベツの揮発性成分に誘引されることが以前の研究で明らかにされている。しかし、その他のアブラナ科植物への選好性は明確になっておらず、またヘッドスペース揮発性成分での誘引成分は明らかにされていない。そこで本研究では、まずアブラナ科植物ヘッドスペース揮発性成分回収にあたり、最適なヘッドスペース回収法を調査した。 回収にはアブラナ科植物キャベツの18成分の標品を使用し、樹脂はPorapakQ(PQ)、Heysep Q、Heysep PおよびTenax TAを供試し、樹脂量、回収時間等を検討した。 ヘッドスペースにおける4種の樹脂による回収は、PQでは18成分標品全てを回収可能であり、その回収率は約1~21%であった。HeysepQは回収率約0~14%で17成分、HeysepPは回収率約0~5%で12成分、Tenax TAは回収率約0~15%で10成分検出された。これら結果より、アブラナ科植物のヘッドスペース回収における樹脂はPQが最適であることが判明した。 次に、ヘッドスペース回収におけるPQ量の違いにおける回収率は、5mlで0%、10mlで約18~89%、15mlで約2~7%であった。ヘッドスペース回収における流量は、0.5L/minは0%、1L/minで約6~18%、2L/minで約9~43%となった。ヘッドスペース回収における回収時間は1、3、6時間の濃度と比較し、24時間以上で十分に回収できており、48時間も24時間と同水準の揮発性成分濃度となった。成分数による比較では、24時間以上で成分数は多く、48時間も24時間と同水準の回収成分数となった。 以上より、ヘッドスペース揮発性成分回収における回収条件は樹脂PQ、樹脂量10ml、流量2L/min、回収時間は24時間が最適であると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画は、これまでに、モンシロチョウメス成虫がアブラナ科植物キャベツを探索する要因が、同植物の揮散させる揮発性成分であることを突き止めたことから、キャベツが自然条件下で揮散する揮発性成分(ヘッドスペース)にモンシロチョウメス成虫の高い誘引成分を有することが想定される。そこで、キャベツヘッドスペースを回収するにあたり、モンシロチョウを最も誘引する成分を特定するため、最適回収法を確立することを目標とした。その中で、計画通り、アブラナ科植物キャベツの標準品を使用し、これまで香り成分を回収する際に使用されている吸着剤および揮発性成分抽出用の代表的な吸着剤4種類(Porapak Q、Tenax TA、Heysep PおよびHeysep Q)、吸着剤の量、流量および回収時間を検討し、ヘッドスペース揮発成分の回収方法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今回アブラナ科植物揮発性成分の最適回収法として確立した方法を使用し、5種のアブラナ科野菜およびそのヘッドスペース回収液に対するモンシロチョウメス成虫の選好性強度を評価するとともに、その成分分析を行う。以上のことを解析することによって、アブラナ科植物ヘッドスペースのモンシロチョウ誘引メカニズムと誘引性強化に関する植物と昆虫の直接的コミュニケーションの解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
モンシロチョウメス成虫は、キャベツを含む様々なアブラナ科植物を探索・産卵し、その寄主選好性強度は植物種によって差がある。この寄主選好の差は、植物の放出する揮発性成分の組成や放出量の違いによるとの仮説を立て、ここでは5種のアブラナ科野菜およびそのヘッドスペース回収液に対するモンシロチョウメス成虫の選好性強度を評価するとともに、その成分分析を行う。以上のことを解析することによって、アブラナ科植物ヘッドスペースのモンシロチョウ誘引メカニズムと誘引性強化に関する植物と昆虫の直接的コミュニケーションの解析を進める。まず、キャベツを含めた主要なアブラナ科野菜、ブロッコリー、ハクサイ、ダンコン、カラシナ5種をポット栽培し、モンシロチョウメス成虫の産卵行動が活発となる時間帯(8時~14時)に収穫適期前の5種が放出する揮発性成分を回収する。回収条件は、前年度の最適回収法を用いる。なお、5種の植物体およびそのヘッドスペース回収液に対するモンシロチョウの選好性強度を評価する。回収液の成分分析は、GC-MSで同定・定量を行い、共通成分および特徴成分を解析する。
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