リンドウは、室内鑑賞において花冠が開かなくなり、観賞価値の低下が問題になっている。その問題解決のために、花冠開閉メカニズムを解明することを目指した。 リンドウの花冠改変運動の環境要因を調査した結果、連続光下において20℃以下に低下すると約20分で花冠が閉鎖することが明らかになった。一方、花冠の展開は1-2時間かけてゆっくりと行われた。連続暗黒条件においても同様の傾向が示された。このことから、温度が最も重要な要因であると考えられた。 リンドウの花冠運動の原動力の一つとして、アクアポリンに注目した。リンドウの遺伝子情報から、15個のアクアポリン遺伝子を同定した。花器官における遺伝子発現解析を行った結果、PIP2ファミリーに属するアクアポリンの多くは、花弁の発達とともに遺伝子発現が増加することが明らかになった。閉鎖時より展開時で2つのアクアポリン遺伝子はわずかに強い発現を示した。マイクロアレイ解析により花冠閉鎖時と展開時の網羅的発現発現も実施したが、発現変化を示す遺伝子はわずかであった。次に、タンパク質の挙動を調査するためにウエスタンブロット解析を行った。リン酸化PIP2抗体による反応では、閉鎖と展開花冠間でタンパク質の蓄積量に有意な差は見られなかった。一方、2次元電気泳動による膜タンパク質のプロテオソーム解析において、スポットの違いが検出された。 温度がリンドウの花冠の開閉にとって重要であり、訪花昆虫の行動適温と関連しているのではないかと推定される。今後は、開閉運動とアクアポリンの役割を明らかにするためにさらに解析を継続する。
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