花成を誘導するFLOWERING LOCUS T (FT)は、花成誘導以外にも多面的な機能を持つことが明らかになりつつある。我々は、これまでの研究から多年生植物であるリンドウのFTオルソログ(GtFT)が、花成を誘導する一方で越冬組織の休眠調節に関与する可能性を見出している。本研究は、リンドウ越冬組織において、休眠過程で発現するGtFT1およびGtFT2について機能解析をした。初年度の研究により休眠過程におけるGtFT1、GtFT2の基礎的な知見を得るとともに、培養系リンドウを用いた解析系の構築に成功した。本年度は、初年度の結果を基に、越冬組織におけるGtFT1、GtFT2の相互作用因子及び直接制御因子の探索を行なった。 越冬組織におけるGtFTタンパク質の相互作用因子の探索では、タグ融合GtFTタンパク質を越冬組織で発現させた後、これらについて免疫沈降およびLC-MS/MSを用いたプロテオーム解析を実施した。その結果GtFTタンパク質に相互作用する因子として、これまでモデル植物では得られていない新奇な候補を複数得ることができた。今後、これらを解析することにより、休眠組織におけるFTの働きが明らかになることが期待される。 GtFTの直接制御遺伝子の探索では、期間内にリンドウでのChIP-Seqを実施するまでには至らなかった。そこで代替えの実験として、越冬組織における各生育ステージ(形成初期、自発休眠期、他発休眠期、萌芽直前)について、RNA-Seq法を用いた網羅的な発現解析を実施した。その結果、GtFTの発現と相関する遺伝子群を得ることができた。今後これらの情報を基に、GtFTの直接制御遺伝子の同定、ならびにGtFTが関与する現象を特定することが期待される。 本助成により、多年生植物独自の越冬組織におけるフロリゲン(GtFT)の機能の一端を明らかにすることができた。
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