研究課題
キクは短日植物であり、本研究に用いているキクタニギクは約12時間の限界日長をもつ。我々はこれまでに、花成ホルモンをコードするCsFTL3が短日条件において誘導されることに加えて,花成抑制ホルモンをコードするCsAFTが長日条件および,暗期中断条件において誘導されることがキクの花成制御に重要であることを明らかにして来た。本年度は昨年度作成したキクタニギク概日リズム関連遺伝子、CsLHY、CsTOC1およびCsGIの過剰発現体うち、CsGIの過剰発現体の表現型の解析を行った。野生型は14時間の日長条件において栄養成長を続け、12時間の日長条件において開花するが、CsGI過剰発現体は両日長条件において栄養成長を続けた。一方で、野生型が開花する12時間以下の日長条件において、CsGI過剰発現体は日長の短縮に従って花芽分化し、8時間の日長条件では開花した。すなわち、CsGI過剰発現体では限界日長が野生型に比べて短縮していた。野生型が開花し、CsGI過剰発現体が栄養成長を続ける12時間日長条件においてCsGI過剰発現体におけるCsFTL3の発現はやや低く,CsAFTの発現は顕著に高かった。一方で、明暗周期下と恒明条件における概日リズム関連遺伝子CsLHY、 CsTOC1および、CsCAB2の発現のリズムと振幅はCsGI過剰発現体において維持されていた。以上のことから、キクタニギクにおいてCsGIが概日リズムの変化を介さずにCsFTL3とCsAFTの発現を制御し、限界日長の決定に関わっている可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では概日リズムを破壊し、キクの花成および、休眠に与える影響を評価することを予定していたが、CsGI過剰発現体では概日リズムが正常に機能しているのにも関わらず、限界日長が短縮していることが明らかになった。CsGIはCsFTL3とCsAFTの発現を制御することで限界日長の決定に関わっているとみられ、CsGI過剰発現体はこの過程に関わる新規の因子を単離する材料として有望であると考えられる。このことから、研究はおおむね順調に研究は進展していると評価した。
今後はCsGI過剰発現体において限界日長が短縮している要因について解明していく。研究の進展によってはマイクロアレイ、高速シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行い、CsFTL3とCsAFTの発現に関わる新規因子の単離を試みる。
次年度使用額357,944円は研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。本研究課題の推進のため、次年度の研究費は交付申請時の計画通り使用する。
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PNAS
巻: 110 ページ: 17137-17142