研究に用いているキクタニギクは約12時間の限界日長をもつ短日植物である。前年度までの研究でCsGI過剰発現体では概日リズム関連遺伝子の発現を変化が見られないが、限界日長が約10時間に短縮していることを明らかにした。本年度はCsGIの過剰発現体の表現型の解析を進めることで、CsGIによるキクの限界日長の決定機構の解析を行った。 8時間明期、16時間暗期の日長条件で暗期開始から10、12、14時間後に10分間の暗期中断を与える処理を12週間行い、CsGI過剰発現体に形成された葉の数を調査した。野生型植物体において、暗期開始から10時間後の暗期中断は形成される葉の数を増加させたが、12時間後の暗期中断はその影響が小さく、14時間後の暗期中断では影響はみられなかった。一方CsGI過剰発現体において、暗期開始後10、12、14時間後の暗期中断は有為に形成される葉の数を増加させた。8時間明期、16時間暗期の日長条件で栽培したCsGI過剰発現体に暗期開始から4、6、8、10、12、14、16時間後に10分間赤色光を照射し、照射後6時間後の葉におけるアンチフロリゲンをコードするCsAFTの発現をリアルタイムPCR法よって調査した。野生型植物体では8時間後と、10時間後に赤色光を与えることによって葉におけるCsAFTの発現が誘導されるが、CsGI過剰発現体では8時間後から14時間後にかけて赤色光を与えることによって葉におけるCsAFTの発現が誘導された。以上のことから、CsGI過剰発現体においてはCsAFTの発現を誘導する門(ゲート)が野生型に比較して暗期の後半にも開くことによって暗期後半の暗期中断が花成を遅延させていることが考えられた。
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