研究課題/領域番号 |
24780034
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
佐々木 克友 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 花き研究所花き研究領域, 主任研究員 (60469830)
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キーワード | キク / 転写因子 / 集合花 / 管状花 / 舌状花 / 花弁 |
研究概要 |
本研究では、集合花における花芽分化から花器官形成の制御に関わる分子基盤を明らかにすることを目的としている。 本研究の遂行に際して、本研究所では先行して園芸品種‘セイマリン’を解析対象として用いてEST解析を進めている。今年度は進行中であった(次世代シークエンスソフトウェアのアップロード作業に計半年を要したためにEST解析が遅れていた)EST解析が完了した。次世代シーケンサーによる配列解析計5回の結果、総計3,573,676の配列が解読され、213,205コンテティグ(独立した遺伝子群)が得られた。これらの配列を用いて遺伝子オントロジー解析を行った結果、5.5%が転写因子(11,112コンティグ)、12.7%が水酸化酵素、12.0%が転移酵素の遺伝子と関連付けられた。ここから以下に科研費の申請書に記載した平成25年度計画に沿って研究実施成果を説明する。 ○『キク組換え体作出のための高効率発現ベクターの構築』。これについては、H25年度も作業を進めたEST解析およびマイクロアレイ解析に先行して、キクの花器官形成の制御に関わることが予想されるABC遺伝子であるMADSの機能解析を目的としたキク組換え体作出のための高効率発現ベクターの構築を行った。抑制タイプの発現ベクターについては、転写因子特異的に機能を抑制する手法であるCRES-T法を用いてベクターを作製した。また、H25年度末に新しく作成したキクオリジナルマイクロアレイ(180kプローブ)を用いて、花弁の形または花形が大きく異なる10種類の園芸ギクのRNAを用いたマイクロアレイ解析を行っている。今年度はこのオリジナルマイクロアレイ解析により花器官形成に関わる転写因子をさらに抽出し、解析対象の絞り込み作業も進める予定である。 ○『転写因子を導入したキク組換え体の作出』についても上記のベクターを導入した組換えギクの作出作業を開始しており、現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではキクを用いてU集合花における花芽分化から花器官形成の制御に関わる分子基盤を転写因子を解析対象として明らかにすることを目的としており、これについては概ね順調に研究は進展している。理由として挙げられるのは、H25年度の計画にあった①キク組換え体作出のための高効率発現ベクターの構築、②転写因子を導入したキク組換え体の作出、の2つの作業が順調に進められたからである。マイクロアレイ解析による集合花での花芽分化と花器官形成に重要な転写因子の抽出はH24年度に続いて現在も作業進行中である。これについてはEST解析がH25年度に終了したことに伴い、最新のキクカスタムアレイを作製し直したことで発現解析システムが改善されたこともあるため、現在も作業を進めている。本研究で明らかにする研究目標(U集合花における花芽分化から花器官形成の制御に関わる分子基盤を明らかにする)には重要な作業であり、本来の研究目的に沿う解析であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降も報告書に記載した研究計画に従って研究を推進する予定である。今後の具体的な研究予定であるが、一つ目としてはH25年度から続けている組換えギクの作出作業を進めて解析する組換え個体を選抜し、形態観察を行うと共に花器官形成における機能解析を行う。二つ目としてはオリジナルマイクロアレイにより、H25年度末に10種類の園芸ギクのマイクロアレイ解析を行ったので、これらについて転写因子に着目したマイクロアレイ解析を進める。前年度のマイクロアレイ解析よりプローブ数およびサンプルの選択を改善したことから集合花での花芽分化と花器官形成に重要な転写因子の抽出にさらに適したマイクロアレイ解析が進められることが期待される。これらの解析結果により抽出された転写因子の機能を効率的に抑制(または増強)したキク組換え体作出に向けて、高効率発現ベクターの構築を進める予定である。三つ目としては、EST解析により転写因子が大量に確認されたことから(11,112コンティグ)、ここからさらにキクの花芽分化と花器官形成に係わるABC遺伝子を抽出し、その制御因子の発現領域をオリジナルマイクロアレイを含めた様々な発現解析により特定する作業を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はキクのオリジナルマイクロアレイ解析を進めていたため、個々の遺伝子の発現解析(定量的RT-PCRなど)より、大量データを用いた解析が中心となり(結果的には研究費を効率良く使用したために)、これらにかかる分子生物学的解析に用いる試薬の購入が予定より若干少なく済んだことから次年度使用額が生じた。 本研究課題のため、次年度の研究費は交付申請時の計画通りに使用する。次年度使用額が生じたのは研究費を効率的に使用して発生した残額(27,036円)であり、次年度に請求する研究費と併せて研究計画遂行のために使用する計画である。
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