研究実績の概要 |
本研究では、集合花における花芽分化から花器官形成の制御に係わる分子基盤を明らかにすることを目的として、転写因子を中心に解析を進めている。 本研究所では、先行して園芸キク品種‘セイマリン’を用いてEST解析を進めている。H25年度末に完了したEST解析(次世代シークエンスソフトウェアのアップロード作業に半年以上を要したため、研究計画が遅れていた)では、計5回の解読の結果、総計3,573,676の配列が解読され、213,205コンティグが得られた。有効なコンティグの抽出の後に、H25年度末に新しくキクオリジナルマイクロアレイ(180kプローブ)を作成し、花弁の形または花形が大きく異なる10種類の園芸ギクを用いたマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析の結果、キクの花器官形成の制御に関わることが予想されるMADS、TCP、bHLHなどの転写因子の発現がそれぞれの品種によって異なっていた。H26度はさらに花器官を細分化(舌状花弁、管状花弁、雄蕊、舌状花弁雌蕊、管状化花弁)してサンプリングを行い、マイクロアレイ解析を進めた。これと同時に、H26年度の計画に従ってMADSボックス転写因子の機能を抑制した組換えギクの作出を進めた。 組換えギクの作出に際してプロモーターには35Sプロモーターを用い、また転写因子特異的に機能を抑制する手法であるCRES-T法を組み合わせてベクターを作製したが、研究対象としたMADS等の転写因子が抑制された組換え体は得られなかった。花器官のみならず全身的にこれらの転写因子を抑制することで、目的器官以外にも導入遺伝子の影響が観察されたこ。また一部のコンストラクトでは、35Sプロモーター領域のメチル化等の影響により、導入遺伝子の発現が見られなかった。今後研究を進めるにあたり、キクの花器官で有用なプロモーターの開発やRNAi法による解析等が必要であると考えられた。
|