研究課題/領域番号 |
24780039
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
佐々木 信光 東京農工大学, 学術研究支援総合センター, 助教 (70431971)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 植物ウイルス / 細胞間移行 / 移行タンパク質 / ウイルス抵抗性因子 / 転写仲介因子 / 遺伝子抑制型形質転換 / トバモウイルス / タバコ |
研究概要 |
申請者らは、トマトモザイクウイルス(ToMV)の「移行タンパク質」と結合する植物因子としてタバコ転写仲介因子のNtMBF1aを同定したが、タバコの「ウイルス抵抗性因子N」の機能領域とも結合するというデータを得ている。本研究では、ウイルス細胞間移行およびウイルス抵抗性誘導におけるNtMBF1aの役割や機能を解明すると同時に、遺伝子組換え技術を用いたNtMBF1a遺伝子の発現抑制によるウイルス抵抗性付与に向けた基礎的知見を得ることを目的としている 。 本年度においては、まずNtMBF1a遺伝子の発現が抑制されたタバコ(N. tabacum cv Samsun NN)のT1世代3系統の内、1コピー導入系統を選び、ウイルス接種実験を行った。GFPをレポーターとするToMV変異体 (ToMV-GFP)を用いた接種実験では、1細胞感染部位の割合が増加しており、ToMVの初期細胞間移行が抑制されることが示唆された。一方で、野生型のToMVを接種した場合には、接種実験後とのばらつきが大きく、ウイルス感染による壊死斑の大きさに有意な差が見られなかった。現在までの結果からは、NtMBF1遺伝子の抑制による影響は初期感染細胞からの細胞間移行に対して限定的に働く可能性が示唆されている。 また、ウイルス感染時のNtMBF1aの遺伝子発現をリアルタイムPCRで定量的に解析したところ、ウイルス感染によって遺伝子発現量の大きな変化がないことが分かった。 ウイルス移行タンパク質とNtMBF1aとのタンパク質相互作用解析を行うため、Bimolecular fluorescence complementation(BiFC)法にもちいる発現用プラスミドを完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)サイレンシング誘導タバコを用いた接種実験について。実験に用いるサイレンシングタバコ系統のコピー数を推定し、1コピーのみをもつT1種子からホモ系統を選抜したことにより、安定した実験を行えるようになった。サイレンシングタバコを用いた接種実験については実験データのばらつきがあり、統計的な処理を行って信頼性の高い結論を得るには、更に接種実験を継続し、サンプル数を増やす必要があるが、一定の傾向を得ることに成功していると考えている。 2)サイレンシング誘導タバコを用いた遺伝子発現解析について。ウイルス感染時におけるNtMBF1aおよび防御関連遺伝子の発現解析については、接種実験結果のばらつきもあり、若干予定よりも遅れているが、ウイルス感染時にNtMBF1aの発現に大きな変動がないという結論を得ることができた。 3)タンパク質間相互作用に用いるプラスミドの構築について。 タンパク質間相互作用解析に用いるプラスミドの構築を終えたので、計画通りに実験は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)サイレンシング誘導タバコを用いた接種実験。 ウイルス接種に加えて、一過的遺伝子発現法を用いてエリシターによる壊死斑誘導実験を行い、サイレンシング誘導タバコと非形質転換タバコでウイルス抵抗性および壊死斑誘導性の違いを比較する。 2)サイレンシング誘導タバコを用いた遺伝子発現解析。24年度に引き続き、wt ToMV接種および非接種のタバコから経時的にRNAを精製し、病害抵抗性に関わるサリチル酸・ジャスモン酸・ エチレン経路などのマーカー遺伝子群の発現解析をリアルタイムRT-PCRを用いて定量的に解析する。その解析結果から、サイレンシング誘導タバコおよび非形質転換タバコ間で発現変動に差異の認められる遺伝子群を特定し 、NtMBF1aが関与しているウイルス移行抑制メカニズム(抵抗性経路)を推定する。ただし、接種実験によるウイルス抵抗性のばらつきが大きいと判断される場合には、ウイルスを接種していない状況でのサイレンシング個体と非形質転換個体を用いて遺伝子発現の比較を行うことを考えている。 3)タンパク質間相互作用の解析。 NtMBF1a(全長及び欠損型) 、MPおよびN-LRRの植物細胞発現用プラスミドを用いて、ボンバードメント法によって非形質転換タバコで発現させ、細胞内局在を詳細に観察し、共局在性や共発現による局在変化を調べる。さらに、Bimolecular fluorescence complementation(BiFC)法を用いて、植物細胞内での直接的なタンパク質相互作用を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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