研究課題/領域番号 |
24780046
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
八丈野 孝 独立行政法人理化学研究所, 植物免疫研究グループ, 研究員 (10404063)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 多国籍 / エフェクター / 植物免疫 / 病原菌 |
研究概要 |
アイルランドで起こったジャガイモ飢饉の原因菌であるジャガイモ疫病菌が分泌するエフェクタータンパク質AVR3aは、宿主のユビキチンE3リガーゼCMPG1を標的にして免疫反応を抑制する。CMPG1に何らかの修飾を加えてその機能を抑制すると考えられており、その未知の修飾の実体解明に取り組んだ。まず、AVR3aとCMPG1を共発現させたタバコ属ベンサミアナまたはシロイヌナズナのPUB20過剰発現体からタンパク質を抽出し、免疫沈降後にSDS-PAGEで分離を試みたが、当初の予想通り含有量が非常に少なく、質量分析に供するのに必要なタンパク質量が得られなかった。そこで、これまで使用していたコンストラクトを根本的に見直し、HAタグからGFPタグに変更し、超高発現ベクターpEAQを使用した。その結果、十分量のPUB20-GFPタンパク質が得られ、質量分析に供することができた。質量分析の結果、未知の修飾はユビキチンであることが判明し、さらにPUB20のARMドメインのリジン残基がポリユビキチン化されていることが明らかとなった。このリジン残基をアルギニン及びグルタミンに置換した変異型PUB20をベンサミアナに発現させて、その修飾の有無を調べたところ、変異型では完全に消失することがわかった。この結果から、未知の修飾はユビキチンであることが明らかとなった。現在、植物体内でこのユビキチン化がどのような生理学的意義を持つのか調べるために、変異型PUB20をシロイヌナズナpub20変異体に導入した形質転換体を作製中である。さらに、CMPG1においても同リジン残基がユビキチン化されるかどうかを調べるためにCMPG1-GFPタンパク質の抽出を試みていると同時に変異型CMPG1の修飾の有無を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最大の課題であったPUB20タンパク質の抽出についての問題点を早い段階で見つけ出し、それに対する改善策が効果的であったため、順調にタンパク質を十分量得られて質量分析に供することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
変異型PUB20あるいはCMPG1が修飾されなくなった場合の植物体内での機能を解析する。具体的には、PUB20については、フラジェリン処理に対する活性酸素の発生量や、べと病菌(Hyaloperonospora arabidopsidis)やトマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. tomato)に対する病害抵抗性などの表現型を観察する。これらの実験により、シロイヌナズナの免疫抑制においてもその修飾が重要かどうかを明らかにする。CMPG1については、INF1による細胞死はAVR3aにより抑制されるが、修飾が細胞死抑制に必要かどうか調べる。また、変異型PUB20及びCMPG1の細胞内局在を蛍光顕微鏡で観察する。さらに、PUB20及びCMPG1の相互作用タンパク質を見つける。相互作用するものがレセプターキナーゼなどの膜タンパク質である可能性があるので、共免疫沈降法で単離し質量分析法により同定する。CMPG1及びPUB20の修飾が相互作用に関与するかどうかを調べるために、変異型CMPG1及びPUB20を発現させ共免疫沈降法で解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初難航が予想されていたタンパク質実験が順調に進展したため、当初予定していたほど研究費を使用せずに済んだ。次年度の研究計画においても、主にタンパク質分析を中心に行う予定である。そのため、タンパク質合成に必要な遺伝子工学関係試薬、タンパク質解析関係試薬及び質量分析関係試薬、それに伴うプラスチック器具類や培地等試薬類に研究費を使用する。
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