昨年度から引き続き、イヌガラシを材料に用いて、花の香気成分や花以外の植物体から放出される揮発性成分がコナガ幼虫の食害に伴ってどのように変化するのかについてより多くの反復データを得るべく、それらの揮発性成分を吸着担体で捕集し、ガスクロマトグラフ-質量分析計 (GC-MS) で分析した。また、花序のある食害株と花序のない食害株に対する寄生蜂コナガサムライコマユバチの反応をみる選択試験についても反復を追加し、本寄生蜂が空腹・満腹に関わらず両者を識別しないことを確認した。本結果は、食害株が放出する揮発性成分の存在下では、花の有無が寄生蜂の選好性に影響を与えないことを示しており、天敵誘引剤に応用する場面では、すでに本寄生蜂を誘引することが知られている植食者誘導性植物揮発性成分にさらに花香成分を追加しても、誘引性が大きく高まることは期待できないことが示唆された。しかし、寄主である害虫を低密度に抑え続ける上では、圃場に寄生蜂を誘引し定着させるための花香成分による天敵誘引剤の活用が有効である考えられる。
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