研究課題/領域番号 |
24780057
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 真幸 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (80546292)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ホウ酸輸送体 / NIP5;1 / upstream uORF / 5' 非翻訳領域 (5'UTR) |
研究概要 |
本研究ではホウ素に応答したNIP5;1 mRNA蓄積のmRNA分解を介した制御機構の解明するため、ホウ素に応答したmRNA分解を制御する因子の同定および、NIP5;1 5’UTR内のmRNA分解領域の同定を目的とした。mRNA分解を制御する因子の同定のため、NIP5;1プロモーター+ 5’UTR-GFP-NIP5;1形質転換体をEMS処理し得られた突然変異系統から、ホウ素応答異常の変異株をスクリーニングし、その変異株の原因遺伝子を特定することを1つ目の実験とした。24年度の計画通りに進み、M2世代から、様々な変異株を取得した。具体的には、植物をホウ素十分条件下においてGFPの蛍光が見られる変異株をスクリーニングした。一次スクリーニングでは根端が強く蛍光するものや、側根が発生する細胞で強く蛍光するもの、あるいは根全体で蛍光しているものが採取された。それらに関しては次世代の種を得るため、植物を育てている。 NIP5;1 5’UTR内のmRNA分解領域の同定のため、24年度では、NIP5;1 5’UTRに変異を施したコンストラクションを作製し、一過的発現系を用いてホウ素に応答したNIP5;1 mRNAの分解に重要な領域を特定することとした。一過的発現系の実験から、NIP5;1 5’UTRに存在する上流ORF(uORF)、AUGUAA配列がホウ素依存的なNIP5;1mRNA分解に重要であることを明らかにした。また、得られた結果から、形質転換植物を作製しそのタンパク活性とmRNA蓄積を調べたところ、AUGUAA配列が欠けると、ホウ素に依存した活性やmRNA蓄積が、見られなくなった。これらの一連の結果から、NIP5;1 5’UTRに存在するAUGUAA配列がNIP5;1のホウ素に応答したmRNA分解だけでなく、翻訳効率にも重要な領域であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mRNA分解を制御する因子の同定のための実験において、24年度の予定通り、一次スクリーニングで少しでも蛍光が観察されたもの候補として採取することができ、現在、次世代の種を得ようと植物を育てている。 一方で、まだM3種子で二次選抜が始まっていないが、今月から来月には種を取得できるので、種が取得出来次第、候補株を絞っていく予定である。また、遺伝子座を同定するための掛け合わせに関しては順調に進んで知るので、選抜が終了次第、遺伝子同定のためのポジショナルクローニングを進めて行くことが可能である。 NIP5;1 5’UTR内のmRNA分解領域の同定のための実験において、24年度の予定通り、一過的発現系を用いてホウ素に応答したNIP5;1 mRNAの分解に重要な領域を1塩基レベルで特定することができた。また、これらの結果を元に形質転換植物を作製し、25年度で計画していた実験も行った。これらの実験から、NIP5;1 5’UTR内のmRNA分解領域にはuORF、特にAUGUAAが重要でることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
mRNA分解を制御する因子の同定のための実験では、25年度の計画通り、得られた変異株のポジショナルクローニングを進めて行く。得られた候補遺伝子をマッピングである程度絞り込んだ後、次世代DNAシークエンサーを用いて、候補遺伝子の特定を行う。遺伝子が特定された後、T-DNA挿入変異株を取得し、T-DNA挿入変異株のNIP5;1 mRNA蓄積・mRNA分解速度を調べる。同時に、T-DNA挿入変異株のホウ素過剰条件での生育を観察する。 NIP5;1 5’UTR内のmRNA分解領域の同定のための実験では、25年度の計画はすでに24年度に終えてしまったため、25年度の計画は、さらにNIP5;1のホウ素に応答した制御機構の解明をさらに追及することとする。最近の研究では、ホウ素濃度に対応してNIP5;1のmRNA分解中間体が発見され、その切断位置がuORF、AUGUAA上流に位置することが見出された。それはリボソームがuORF、AUGUAA上でホウ素依存的に停滞していることを示唆した。しかしリボソームが実際にどの位置で停滞しているかは明らかとなっていない。以下の実験を行うことにより、リボソームが5’UTRのAUGUAA上で停滞するのかどうかを検証していく。1. in vitro translation法を用い、ホウ素に応答して翻訳がどのようにおこっているのかをuORFに変異をいれたコンストラクションを作製し検証する。2.のコンストラクションを利用し、ホウ素条件に対応したリボソームの停止位置をToeprint法により実験的に検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
分光蛍光光度計を、買い換える費用として、190万円使用する。転写阻害剤やRNA 抽出関連試薬、レポーターアッセイ関連試薬の費用として、15万円使用する。また、共同研究者である北海道大学大学院農学研究院応用生命科学部門の内藤哲教授らとの打ち合わせや、国内外での論文発表費用として、30万円、論文投稿に関する費用として30万円使用する予定である。
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