研究課題
本研究では,ホウ素に応答したNIP5;1 mRNA蓄積のmRNA分解を介した制御機構の解明するため、ホウ素に応答したmRNA分解を制御する因子の同定および、NIP5;1 5’UTRを介した発現制御機構の解明を目的とした。mRNA分解を制御する因子の同定のため、NIP5;1プロモーター+ 5’UTR-GFP-NIP5;1形質転換体をEMS処理し得られた突然変異系統から、ホウ素応答異常の変異株のスクリーニングの解析を行い、その変異株の原因遺伝子を特定する。24年度以降、M2世代から、様々な変異株を取得した。それらに関して25年度ではM3世代の種を用い、二次スクリーニングを行った。その結果、M3世代でもホウ素応答異常がみられる変異株を一株取得した。得られた変異株に関して原因遺伝子の特定のための掛け合わせを開始した。また、一次スクリーニングを再開し、さらにホウ素応答異常の変異株を取得することとした。NIP5;1 5’UTRを介した発現制御の分子メカニズムを解明のため、24年度の研究で、NIP5;1のホウ素に応答した発現制御には5’UTR内に存在するAUGUAA配列が重要であることを明らかにした。25年度では、プライマー伸長法およびToeprint法を用い、ホウ素依存的に、リボソームがAUGUAA配列上で停滞し、そのリボソームの5’末端側でmRNAが切断され、mRNAの分解が引き起こされていることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
mRNA分解を制御する因子の同定のための実験において、25年度では、遺伝子同定のためのポジショナルクローニングを進めて行く予定であったが、一次スクリーニングで得られたほとんどの変異株は、M3種子での二次スクリーニングで、ホウ素応答異常の表現型が見られなかった。唯一、M3種子でホウ素応答異常が見られる変異株を一株取得することができ、遺伝子座を同定するための掛け合わせを開始している。この変異株に関して遺伝子同定のためのポジショナルクローニングを進めて行く予定であり、さらなる変異株の取得のための一次スクリーニングを今後続けていく必要がある。NIP5;1 5’UTR内のmRNA分解領域の同定のための解析に関し、24年度においてすでに25年度の計画も達成し、NIP5;1 5’UTR内のAUGUAA 配列がホウ素に応答したmRNA分解に必須でることを明らかにした。そこで25年度ではさらにNIP5;1 5’UTR内のAUGUAA 配列を介したmRNA分解の制御機構を明らかにするための解析を行った。そこでリボソームがAUGUAA配列にホウ素依存的に停滞することを発見し、またそのリボソームの停滞がmRNAの分解を引き起こすことを明らかにした。
26年度の計画では得られた変異株のポジショナルクローニングを進めて行く。得られた候補遺伝子をマッピングである程度絞り込んだ後、次世代DNAシークエンサーを用いて、候補遺伝子の特定を行う。遺伝子が特定された後、T-DNA挿入変異株を取得し、T-DNA挿入変異株のNIP5;1 mRNA蓄積・mRNA分解速度を調べる。同時に、T-DNA挿入変異株のホウ素過剰条件での生育を観察する。また一次・二次スクリーニングを再開し、ホウ素応答異常の変異株の取得を目指す。
遺伝子導入装置を購入する予定であったが、当研究室の既存の装置で代替することが可能であったため、購入を見送った。当初予定していなかったが、ホウ素応答異常の変異株の単離のための次世代DNAシークエンサー使用するための費用にあてることと、国内外での論文発表費用等を想定している。
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Plant and Cell Physiology
巻: 54 ページ: 1056-63
10.1093/pcp/pct059