研究課題/領域番号 |
24780062
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長坂 征治 東洋大学, 生命科学部, 教授 (60534013)
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キーワード | ムギネ酸類 |
研究概要 |
ムギネ酸類生合成関連酵素タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質をイネの培養細胞内で発現させて局在解析を行った。前年度にも同様の実験を行ったが、融合タンパク質の蛍光が弱い、自家蛍光が強いなどの問題があり形質転換された細胞の確認が困難な状態であったため遺伝子の導入法、培養法等について改めて検討を行った。形質転換の方法として、エレクトロポレーション法とPEG法を用いたが、いずれの場合に置いてもベクターを含まない処理のみで、遺伝子導入処理の数時間後から自家蛍光の顕著な増加が観察された。また遺伝子導入処理後から経時的に観察を行い、5~7時間後に融合タンパク質由来の高い蛍光を持つ細胞が確認された。この条件下ではムギネ酸類生合成関連酵素の一つであるNASとGFPの融合タンパク質が小胞への局在が観察された。同様にNAATとGFPの融合タンパク質についても細胞内での局在が観察されたが、NAS-GFP融合タンパク質とは異なる局在が示唆された。強い蛍光を発する細胞の確認はできたが、その細胞数は少なく安定した局在解析結果を得るために、導入条件、別の蛍光タンパク質の発現解析を行っている。 オオムギからのムギネ酸顆粒の精製では、遠心分画の各画分から抽出したタンパク質を用いてウエスタンブロット解析を行った。しかしながら遠心上清の画分でも同様にタンパク質が検出されること、また酵素タンパク質の濃縮効率が非常にひくいことから、連続あるいは不連続の密度勾配遠心法による精製を試みたが、ムギネ酸顆粒の精製には至っていない。一方で、遠心上清の可溶区では酵素タンパク質分解が顕著に認められ、沈殿では同様の傾向が認められないことからムギネ酸顆粒内などの分解を受けにくい部位に存在する酵素タンパク質が得られていると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イネの培養細胞を用いた発現系について、鉄欠乏誘導によるムギネ酸形成機構の解析を行うには至っていないが、遺伝子導入による誘導タンパク質の発現と蛍光観察に目処がたったことから詳細な観察ができるものと考える。また、複数の遺伝子を同時に導入する事で、ムギネ酸類生合成に関わる酵素の詳細な局在解析ができるものと考える。一方、ムギネ酸顆粒の形成、輸送に関わるタンパク質群の解析については、顆粒の粗精製までは順調であったが、濃縮度、精製度の向上が進んでおらず、プロテオーム解析には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
鉄欠乏状態とムギネ酸類顆粒の形成について、イネ培養細胞の形質転換による融合タンパク質の発現が改善されたことで解析が可能となる。具体的には融合遺伝子の発現に用いるプロモーターを酵素遺伝子自身のプロモーターに変更し、培養細胞を鉄欠乏に曝すことでムギネ酸顆粒の形成過程を解析する。また、複数のタンパク質を同時に発現させることで、ムギネ酸顆粒の形成段階に応じた酵素タンパク質の発現や局在の相違などの解析を行う。 ムギネ酸顆粒の精製については、オオムギから単離した小胞画分の精製にこだわらず、イネの培養細胞からの単離についても同様に精製を試みる。この場合には、組織を破砕する必要がなく純度の高いプロトプラストが得られること、蛍光を指標としてムギネ酸顆粒の精製が可能であること等の利点がある事から推進の起点として有意義であると考える。精製が完了し次第、順次プロテオーム解析に供する。
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