研究実績の概要 |
ミヤコグサとゆるい共生関係を構築する生育促進菌類(PGPF)のTrichoderma koningii(Tk)が共通共生シグナル伝達経路を利用しているのか検証するために、ミヤコグサの共生変異系統(菌根形成シグナル伝達経路に遺伝的変異を有する)にTkを接種し、病害抵抗性関連遺伝子である4つのイソフラボノイド型ファイトアレキシン生合成遺伝子の発現誘導パターンを解析した。その結果、IFS, HI4’OMT, PTR1の発現誘導が復活することを確認してきた。今年度は、菌の共生関連遺伝子を得るためにランダムミューテーション法によりTkの共生能欠損菌株を作製するとともに、Tkのミヤコグサ共生変異系統の根部への定着を顕微鏡解析し、糸状菌(菌根菌)共生経路がTkのゆるい共生関係構築に必要であるか検討した。 Tk野生菌株では、ミヤコグサ野生系統のファイトアレキシン生合成遺伝子の発現が抑制されるが、遺伝子組換え体の中に発現量が回復した菌株が見られた。これら菌株は、ミヤコグサのファイアレキシン生合成遺伝子の発現抑制に関わる遺伝子が欠損したために共生能を消失することが考えられるため、今後、ゲノム上の形質転換ベクターの挿入位置を解析することによって、共生関連遺伝子の解明につながる。 Tk野生菌株を接種したミヤコグサ強制変異系統の根の横断切片の顕微鏡観察を行い、根内部への感染を解析した結果、野生系統MG20では、根の表皮細胞(間隙)内だけでなく内皮細胞(間隙)内でも菌糸が確認された。一方、共生経路変異系統では、根の表面上では菌糸の定着が一部確認できたが、根の内部まで侵入した菌糸は検出できなかった。このことから、Tkがゆるい共生関係を樹立するには菌根菌の共生経路が必要であることが示唆されたが、今回は横断切片の精度が非常に低く、菌糸の見極めが非常に困難であったため再度の検証が必要である。
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