研究課題
本申請研究は、窒素栄養欠乏の感知・伝達・応答分子メカニズムの解明を目指したものである。具体的には、窒素欠乏環境への適応において重要な役割を果たす高親和性硝酸イオン輸送体NRT2.4の発現制御を担う転写因子の同定・解析を行うことにより、窒素欠乏応答を支える転写ネットワークを明らかにすることを目指した。申請者は、昨年度までに窒素欠乏応答に必要な最小プロモーター領域の絞り込み、この最小プロモーターを用いたYeast-One-Hybridスクリーニングによる転写因子群の単離に成功した。さらにトランジェントアッセイを用いて植物体内における相互作用を検証した結果、一群のGARP-G2型転写因子NSR(Nitrogen Starvation Regulator)ファミリーを有力な制御因子候補とした。シロイヌナズナには約40のGARP-G2型転写因子が存在するが、NSRファミリーはN末端側に転写抑制SRDXモチーフをもつのが特徴である。そこでトランジェントアッセイ法を用いて調べたところ、確かにNRSはこのモチーフの作用により、転写抑制因子として働くことを明らかにした。また、窒素栄養状態に応じた発現パターンを調べたところ、NSRファミリーのうち5種類が窒素欠乏により抑制され、NRT2.4の発現と負の相関を示すことを見いだした。さらに窒素栄養の種類や組織に応じて特徴的な発現パターンを示すものがあることも明らかにした。NSRの生理的役割を明らかにするため、T-DNA変異体と恒常的活性化型NSR発現体の解析を行った。シングルのT-DNA変異体では、明らかな表現型は見られないことから、NSRメンバー間で機能の冗長性があることが示唆された。恒常的活性化型NSR発現体では、NRT2.4の恒常的高発現とともに、窒素欠乏時に似た植物体の矮化が見られた。これらの結果から、NSRは窒素欠乏応答に関わる遺伝子の発現を負に制御する因子であることが強く示唆された。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (3件)
Developmental Cell
巻: 27 ページ: 452-461
10.1016/j.devcel.2013.10.004
Plant Cell Physiol.
巻: 55 ページ: 281-292
doi: 10.1093/pcp/pct186
http://www.riken.jp/pr/press/2012/20120111/
http://www.riken.jp/pr/press/2013/20131126_1/
http://first.lifesciencedb.jp/archives/8063