研究課題/領域番号 |
24780067
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐々木 建吾 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (50558301)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Sweden |
研究概要 |
有機性廃棄物から水素・メタンを高効率に回収する、新規の電気化学的リアクターの開発を目的として研究を進めてきた。まず、炭素板を電極として使用し、三電極方式を採用した、安価な電気化学的リアクターを構築した(こちらのリアクターでは陽イオン交換膜も使用していない)。本電気化学的リアクターに極めて微量の電流を流す事により、つまり投入エネルギーを最小限で抑えながら、水素発酵の構築に成功し、より多くのエネルギーを水素として回収した。これはドッグフードスラリーのように、複雑な基質である模擬有機性廃棄物を使用した場合も可能であり、有機性廃棄物からの高効率水素回収に展望を示した。また電気化学的リアクターを使用した水素発酵は、従来の水素発酵に比べて高いpH(6.5近傍)での運転が可能である事が明らかとなった。高いpHの利点としては、微生物による酪酸/酢酸発酵を優先化する事が可能となり、従来の水素発酵のように低いpHで優先化しやすい乳酸発酵を抑制して、水素回収率を高く維持する事に成功した(乳酸発酵では水素回収率が低く、酪酸/酢酸発酵では水素回収率が高い)。さらに、電気化学的リアクターを採用した水素発酵の残存物を利用して、メタン発酵にも成功し、水素・メタンの同時回収に展望を示した(メタン発酵には固定床式を採用している)。電気化学的水素発酵リアクターより遺伝学的解析方法を用いて微生物群集構造を詳細に解析した結果、水素を消費するメタン生成菌の生育が抑制されているものの、水素を生成する細菌の生育は抑制されておらず、これが理由となって、高効率の水素生成が可能であると考えられた。また、電気化学的手法により対極上の電位を調べた結果、メタン生成菌が生育可能な酸化還元電位よりも高く維持されており、この高い電位がメタン菌の効率的な抑制に繋がっている事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学的リアクターを用いて、模擬有機性廃棄物からの水素・メタンの回収に成功し、数か月間、安定的に運転する事に成功した。微生物群衆構造の解析も終了しており、微生物学的な知見を得る事に成功した。 研究実績で得られた内容を学会で発表し、興味を持って頂けた。シンポジウムにおいて招待講演を行い、発表内容について興味を持って頂けた。本研究により得られた成果を、企業にも使用して頂けるように、企業向けの雑誌に掲載して頂いた。当成果が企業の目に止まる事を望んでいる。学術論文としてまとめて投稿しアクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
当研究で構築した電気化学システムを、水素発酵だけでなく、他の微生物にも適用する事を予定している。本研究で得られた知見により、電気化学システムは微生物の代謝に影響を与える事が示されている。この知見より、有用物質を生成する微生物に適用する事により、生成効率を上げる培養法を確立する事を目的として進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
電気化学システムの改良に使用する事を予定している。また、学会発表にも使用する事を予定している。
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